現代時評《歪(いびつ)な日本》片山通夫

最近の報道によると、中国電力が中間貯蔵地の建設調査を山口県・上関町に要請し、町長はこれを容認したらしい。容認の理由は「町は急速に疲弊が進み、就任以来強い危機感を抱いている」というから、いわゆる原発マネーをあてにした「容認」だと言える。

ともあれ、地方の町はすべからく人口減とそれに伴う財政難に苦しんでいる。無論例外はある。有名な観光地を控えている大都市周辺の町や、国際空港に隣接していて、税収がある町など、特別な状況にある町、それに東京のように人口が集中している大都会なども、経済的には裕福だ。この傾向はいわゆる高度経済成長の時代の弊害が今に起こっているのだと思う。一極集中する首都・東京から先日京都に文化庁が引っ越してきた。しかし東京の中央官庁の一部門が越してきても、役人はせっせと東京に通うだけだろう。

こんな話をだいぶ以前に韓国の地方の町で聞いたことがある。李氏朝鮮の時代、首都ソウルから地方には日本でいう「代官」が派遣されていた。競争社会である官僚たちは地方の民の生活をよくすることには目を向けないで、己が出世だけを目標として、中央ばかりを見ている。おのずから地方は搾取の対象として疲弊してゆく。民は苦しむばかりだったという。

今の我が国も同様の状況だと言える。先に述べた上関町のケースを見ても決して経済的には裕福な地域ではないだろう。人口は減るばかりで税収も乏しくなる。そんな中での原発の廃棄物の中間貯蔵の容認とはいささか悲しい。「町を壊す」、「金ないんじゃけ…」と地元は対立した。一方東京だが明治神宮外苑の多くの樹木を伐採し、ビルやスポーツ施設などを建設する計画がある。東京はますます大きくなってゆく。

地方に対する手当を早急にすべきだ。あまりにも不均衡な状態では国力も衰える。太平洋岸のベルト地帯だけが日本となってますます他は衰えてゆき、高年齢者は死ねばよいなどと荷物扱いする輩が大手を振って歩くく日本にはしたくない。原発マネーで生き延びる町など決して美しくもうれしくもないと思う。そうせざるを得ない日本を憂う。

すでに我が国は歪(いびつ)になってしまっている。

現代時評《明日8月2日は満月》片山通夫

チョウザメ

いや特に何もない満月で狼男に変身するわけでも無いと思う8月の満月。
満月は英語でfull moonと言うらしい。スペイン語ではLuna llena 。(川の)増水,氾濫(はんらん)を意味するllenaが使われる。なんとなく川が満水のなったようなイメージ。
そしてアメリカ先住民の間ではスタージェンムーン/Sturgeon Moon/チョウザメ月と呼ばれているようです。日本人には(いやもしかしたら私だけかも知れないが?)チョウザメはあまりなじみがない魚。
そして米・五大湖周辺で先住民たちのチョウザメ漁がシーズンを迎えるのがこの時期だから、この満月をスタージェンムーンと呼ぶらしい。

狼男が現れるか?

所でチョウザメはアリューシャン列島及びアラスカ湾からメキシコのエンセナーダまで分布し、かつて日本にも分布していたが残念ながら絶滅危機に。それまで岡山県新見市では、小中学校などの給食に、同市特産のチョウザメのフライが出されたという記事がある。《チョウザメフライ「肉みたい」 新見市の小中学校などで給食に登場ー産経新聞 2015/6/19 07:05 》

さて満月と言えば狼男(女)の話だが、本来、彼(彼女)はそれぞれの人生を人として普通に生きている。言葉もしゃべれば、食事も普通に摂る。しかし13年に一度、「赤い満月」が空に上ろうとしているとき、その人物は耳や足、手などがむずがゆくなり、体は人、頭は狼のそれに変身し満月に向かって吠える。知らんけど・・・・。

巷はビッグモーター、木原副官房長官がらみの話題、マイナカード騒動、関西万博の行く末などスキャンダラスな話題で持ちきりだが、明日の満月には月を愛でながら「絶滅危機の動植物」の運命を考えてみる機会にしたい。

 

 

現代時評《袴田事件にみる司法の人権意識の欠如》井上脩身

袴田事件について検察側は7月10日、再審公判で有罪を立証することを明らかにした。シロであるはずの袴田巌さんをクロに引き戻そうというのである。再審請求審で裁判官が「証拠の捏造」を指摘したように、この事件の本質は、捜査当局が証拠をでっちあげ、袴田さんを死刑台に送ろうとしたことにある。原審の静岡地裁では主任裁判官がでっちあげを疑い、袴田さんを無罪とする判決文を書いたが合議でひっくり返り、死刑判決になるという異例の展開をたどった裁判である。本来、原審で無罪になるべき事件が、事件発生から半世紀以上も過ぎたいま、なぜ再審で白黒を争わねばならないのか。わが国の司法には人権意識が欠如しているため、とみるほかない。 “現代時評《袴田事件にみる司法の人権意識の欠如》井上脩身” の続きを読む

◆現代時評plus《虚構の国・日本》片山通夫

大阪万博開催日まであと2年を切った。巷間言われているように、外国の出展が順調でない。パビリオンの建設申請が7月半ば時点でゼロだという。一方で同万博の前売り券を関西企業に200億円分購入依頼が協会からなされた。また大人約5000円と想定していた入場券の基本料金を、7500円に引き上げられた。ウクライナとロシアの戦争に端を発した物価上昇と人材不足があいまって万博の開催が危ぶまれている。
一方大阪府・市が実現を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)について「2029年の開業が難しいというのは当事者の共通認識」と述べ、開業時期のずれ込みに言及した。

この夏、汚染水を処理水と言い換えて、得るはずの地元の了解を得られないまま1キロ先で海に流すと東京電力と岸田政権は決定したようだ。当初は地元の理解を前提にと言っていたがどうも強硬する姿勢である。筆者が気になるのは「汚染水」を「処理水」と言い換える事だ。この国には「侵略」を「侵入」と表現し「退却」を「転戦」と言い換える便利な文化」を持つ。

どうもここ10年余りの日本の政府は自分たちの「利益や保身」を最優先して、大多数の国民の利益を考えることはなかったようだ。だから最近多い豪雨や台風の被害など自然災害にもあまり目を向けてこなかった。そして遂には旧統一教会と結託したと言ってもいい位の仲で信者の過程を崩壊させる「安部広告塔」となって信者の家族に謀殺された。
しかるに自民党の内部では「安部の神格化」を目論んでいるようだ。安倍晋三元総理留魂碑の建立がその形として表れている。

このような「虚構の世界」に身をおいて生きている自民党の面々は決していま我が国がおかれている悲惨な現実を真正面から見ようとしない。少子高齢化、食料自給率38%、北朝鮮にも劣る宇宙ロケットの技術、旧統一教会問題、福島原発の汚染水、最近はマイナンバーカードのドタバタ・・・・。挙げればきりがない。

まさに「虚構の国・日本」に棲む政治家、財界人そして官僚・・・。

現代時評《公文書》片山通夫

公文書危機 闇に葬られた記録(毎日新聞)

公文書等(国の行政文書等)は国及び独立行政法人等の諸活動や歴史的事実の記録であり、国民共有の知的資源です。このような公文書等を適切に管理し、その内容を後世に伝えることは国の重要な責務です。(内閣府公文書管理制度

この「適切に」管理し・・・と文言通りに行かないのが我が国の現状だ。文春で「今、公文書を軽視する風潮がひろがっている」と痛烈に批判したのは福田康夫元首相だ。
今年(2023年)3月の国会での質疑で高市経済安全保障担当大臣が、総務省の公文書を「まったくの捏造だ」と批判して波紋を呼んだことは記憶に新しい。この文書の作成当時高市氏は総務大臣だった。また、安倍晋三政権下では「森友学園問題」や「加計問題」、さらには「桜を見る会」をめぐっても、公文書の改ざんや破棄がおこなわれていたことが発覚している。

こうした事態を福田康夫元首相は「文藝春秋」誌上で「公文書は『国家の証し』そのものである」としたうえで、近年の政治家の「権力の用い方」に大きな懸念を表明し警鐘を鳴らした。

福田氏は〈まず最初に強調しておきたいのは、公文書は「国家の証し」そのものである、ということです。わが日本国がどのように成り立ち、国家の仕組みや制度がどんなふうに出来上がってきたのかを証明する大切な証拠なのです。私は若い頃、アメリカの公文書館が膨大な文書を保管し、きちんと公開していることを目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。民主主義国家の底力を見た思いがしました。そこで、私が官房長官と総理大臣の頃、公文書管理法の制定に道筋をつけたのです。ところが、近年公文書を政治家が「捏造」と決めつけるとか、官僚が改ざんをするといった、とんでもない事件が立て続けに起きた。(中略)これは「権力の行使」に大きな問題があると考えられます。さらには「政治主導」に起因する問題もあります。〉

安部政権時代は政治家が中央省庁の官僚を「顎で使い」、言うことを聞かない官僚は「内閣人事局」管理しだした。この制度は政治家が官僚を意のままに動かすという制度にもなり、まさに安部政権とそれに続く現政権まで公文書管理の面でもいわゆる「忖度」ということが横行している。筆者など安部政権時代にはじめて政治の場での「忖度」ということがあると知って驚いた記憶がある。

先に述べた高市氏の「公文書は捏造だ」と国会で述べた答弁は高市氏の心に頭にこびりついた「安部時代からの垢」なのかもしれない。高市氏は国会の追及を「捏造」という言葉で乗り切ったつもりだろうが、その発言の記録は永久に残る。きっと招来に恥ずかしい思いをすることだろう。

モノローグ・コロナの日々《治療薬》片山通夫

コロナがおそらく政権の疲れからか感染症の分類が2023年5月8日から2類から5類に変更になった。5類とはインフルエンザ並みだとか。・・・とすると、治療薬が存在する。高熱になった場合は、 発症後48時間以内であれば抗インフルエンザ薬(タミフルやリレンザ等)の効果(インフルエンザウイルスの増殖を抑える)が期待できるようだ。また漢方薬の麻黄湯(まおうとう)などが効果的だとか。

しかし残念ながら、コロナにはこれほど効果が期待できる治療薬はまだないようだ。知り合いの医師と話していたら「町のドラッグストアで買えるようになることが理想だが」とつぶやいていたのが印象的だった。

現代時評《傭兵会社ワグネル》片山通夫

盤石の体制だったと世界が考えていたロシアのプーチン体制の一角がほころび始めた。周知のように民間軍事会社ワグネルの「一日反乱」が起こったのだ。ワグネルは19世紀ドイツの作曲家のリヒャルト・ワグナーのロシア語。ちなみにウクライナで活動中の民間軍事会社の名称にモーツァルト・グループというのがある。ワグナーにしろモーツアルトにしろ迷惑だろうな。所でそもそも傭兵の歴史は古いようだ。
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モノローグ・コロナの日々《あなたの価値観を私に押し付けないで》片山通夫

同性婚に関する裁判や性的少数者(LGBTQ)の理解増進法などになんとなく、しかし長い間、違和感を覚えていた。それが何なのか、自分でも自覚できなかった。それが今朝すっと、いわゆる胸のつかえがとれた。
国が、国家権力が個人の生き方に干渉しているからなのだと気が付いた。まったく余計なお世話なのだ。これと「差別する」ということはまったく違うということを書き添えておく。気をつけなくてはいつの間にか個人の生活、もしかして尊厳にまで国家が干渉しだす。東京新聞の2023年6月26日の記事に「 LGBTQ権利擁護の大パレード、NYで観衆200万人「他人の価値観をコントロールしようとしないで」 という記事があった。
言葉を換えれば「あなたの価値観を私に押し付けないで」だ。(掲載は不定期です)

モノローグ・コロナの日々《梅雨の中の七夕と伝統的七夕》片山通夫

子供の頃はこんな七夕の夜が恋しかった。

昔、小学生のころ、七夕祭りはいつも雨か、うっとおしい日の連続だった。何しろいわゆる梅雨のさなか。降らない方が不思議な時期だった。そして8月に絢爛に行われる仙台の七夕祭りがうらやましかった。そしてなんて頭のいい人が考えたのだろうと長い間そう思っていた。しかし本来は旧暦の7月7日が正しいのだと気が付いた。変に新暦に「語呂合わせ」をするからいたいけな小学生を悩ますのだ。
太陰太陽暦は、明治6年に現在の暦が採用されるよりも前の暦で、現在は公には使われていない。このため、伝統的七夕の日は、太陰太陽暦による7月7日に近い日として、以下のように定義された。
つまり二十四節気の処暑(しょしょ=太陽黄経が150度になる瞬間)を含む日かそれよりも前で、処暑に最も近い朔(さく=新月)の瞬間を含む日から数えて7日目が「伝統的七夕」の日という。

さて今年は8月22日がその日に当たる。そんな先なら忘れてしまいそう。

モノローグ・コロナの日々《プーチン 大変!》片山通夫

外国の干渉が間接的せよ、直接席的にせよ、うるさいのかプーチン大統領の腰がなんとなく定まっていないように感じる。BBCは「ベラルーシ大統領、プリゴジン氏の到着を発表し亡命を歓迎 ワグネルに基地提供と」、「プリゴジン氏、ロシア軍トップ2人の拘束計画 米紙」などと姦しい。
いずれ一枚岩でなく、一癖も二癖もある3人のにらみ合い。我々凡人にはまったく先が読めない。言えることは「プーチン 大変!」だ。