現代時評《北朝鮮がミサイル発射した。》片山通夫

北朝鮮がミサイルを撃った。最高高度は1000㎞、飛距離は4600㎞。日本の「上空」をはるかに超えて、宇宙空間を飛んだようだ。高度400㎞では、国際宇宙ステーション(ISS)が回っている。その2倍以上の高度となるととてもじゃないけど「日本上空」ではなく「宇宙空間」としか言いようがない。
それを「日本上空を飛んだ」という表現はかなり無理があるというか、まったくの「為にする」嘘だ。ここでかなりの誤解があるようなので北朝鮮が発射する毎に日本国内で説明される「語句」を調べてみた。

まず日本の「領空」だが、国際的に言われているのは「米国、日本などは領空の高さに対する基準を定めれば宇宙活動の萎縮と国際紛争を引き起こす可能性があるという立場であり、英国・オランダなどはまだ技術不足を理由に基準確定に反対する立場だ。しかし、フランス・ドイツ・ロシアなどは高度100キロを領空の高さに定めている」というのが実情であり、基本的、常識的には領土の100㎞上空までである。北朝鮮のミサイルが1000㎞の高さを飛んだとするなら、宇宙ステーションが日本上空に差し掛かる度に、この前の10月4日午前7時29分に出されたJアラートに従って、航空機、列車、新幹線を止め、学校は授業を休まなければならない。そして人々は「頑丈な建物に避難」しなければならない。

ここで本稿は言葉の意味を少し解説しておきたい。なぜならNHKをはじめとするマスコミは「日本上空」という常套句と同様、あたかも我が国の領海内だと誤解をする使い方をしている場合があるからだ。

EEZ:排他的経済水域 海洋法に関する国際連合条約に基づいて設定される、天然資源及び自然エネルギーに関する「主権的権利」、並びに人工島・施設の設置、環境保護・保全、海洋科学調査に関する「管轄権」が及ぶ水域のことを示す。決して当該国の領海内ではない。

領海:国の主権が及ぶ陸上の領域である領土と同じように、海にも国の主権が及ぶ領域を「領海」という。
沿岸国が管轄する海域の範囲は国連海洋法条約によって定められている。この条約に基づき、沿岸国は引き潮時の海岸線から12カイリ(約22キロメートル)までを領海にできる。沿岸国の主権は領海の上空や海底の地下にまで及びます。漁業をしたり、石油や天然ガスなどの資源を開発したりする権利を独占でき、領海に外国船が許可なく入った場合は自国の法律で取り締まれる。ただし、外国船には沿岸国の平和や秩序、安全を害しない限り、領海を自由に通航できる「無害通航権」が認められている。
沿岸国の権利が及ぶ海域は領海だけではなく、領海の外側の、海岸線から24カイリ(約44キロメートル)以内の海域を「接続水域」といい、領海内への不法侵入や銃器・麻薬の密輸などの犯罪の取り締まり、感染症の拡大などを防ぐため沿岸国が必要な規制が可能である。
接続水域の外側の、海岸線から200カイリ(約370キロメートル)までの「排他的経済水域(EEZ)」では、漁業や鉱物資源の開発など経済活動の権利を沿岸国が持っており、他国は無断で漁や資源開発ができず、EEZ内で沿岸国に認められる権利は領海内よりも範囲が狭く、船の航行や航空機の上空飛行、海底の電線・パイプラインの敷設は他国も自由にできる。
なお、陸地のまわりに広がる深さ200メートルくらいまでの浅い海底を「大陸棚」といいます。沿岸国はEEZと同じ200カイリまでの海底と海底下を自国の大陸棚と決めることができ、海底の地形や地質が一定条件を満たせば、範囲を最大350カイリ(約648キロメートル)まで延ばせる。沿岸国には大陸棚を探査して天然資源を開発する権利がある。

公海:EEZや領海などに含まれず、どの国の権利も及ばない海域を「公海」という。公海上では各国は航行や漁業などが自由である。
こうしてみると北朝鮮が国際的な取り決めの範囲内でミサイルを発射していると思われる。

しかしというか、だからというか、北朝鮮に対しては、いわゆる外交的手段を前面に押し出した方策を我が国もとらなければならないのではないかと思う。

おまけ

通過通航権:継続的かつ迅速な通過を行うことを条件として、定義された海峡を自由に航行および上空飛行できる権利である。この権利は、軍用・民間用を問わず、全ての外国船舶(含む潜水艦)・航空機に与えられている。

日本における国際海峡
通過通航権
宗谷海峡(北緯45度43分20秒 東経142度1分36秒)
津軽海峡(北緯41度28分54.6秒 東経140度41分27.3秒)
対馬海峡東水道(北緯34度2分4秒 東経129度31分43.7秒)
対馬海峡西水道(北緯34度41分14.7秒 東経129度7分40.1秒)
大隅海峡(北緯30度55分15.8秒 東経130度57分5.5秒)

参考:実効性「ほとんどゼロ」の現実…5年ぶり発令の「Jアラート」 対象地域二転三転で混乱した住民も。
東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/206452?rct=main