現代時評plus《外交の安倍のなれの果て》片山通夫

石破元幹事長との自民党総裁選一騎打ちで「論戦」を逃れるように、北海道の地震に、おざなりの5億円余りの予算を出して「外交の安倍」をアピールするためにか、ロシアへ赴いたまではよかった。

22回目となる、10日のプーチンとの首脳会談は、毎日新聞などによると<共同経済活動実現へ工程表 領土進展なし>というありさまだった。そして<首相は日露平和条約が締結されていないことについて「異常な戦後がそのままになっている。私とプーチン大統領の間で終わらせる」と強調>したという。

そして昨日12日、プーチン氏は全体会合に出席していた安倍首相ら聴衆を前に、「年末までに前提条件なしで平和条約を結ぼう」と呼びかけた。そして「私は冗談を言っているのではない。平和条約の中で問題の解決を目指すと書けばいい」と述べた。

おそらく今頃安倍首相は世界の聴衆の前に「恥をかかされた」と側近や外務省の役人に当たり散らしていることだろう。なにしろ「異常な戦後がそのままになっている。私とプーチン大統領の間で終わらせる」と啖呵を切った挙句のことである。プーチン発言の引き金は安倍自身の口から出たのだ。それでも「恥をかいた」彼は側近や外務省に当たり散らしているということは想像に難くない、容易に想像できることだ。

外交の席で見栄を張って威張って見せるのもほどほどにするがいいということを身をもって経験しただろうが、あの懲りない男は実際には堪えていないのかもしれないと反対に心配する。いずれにしても恥ずかしい話である。

さて本題。なぜこのようなことが起こったのかだが、簡単に言えば側近にしても、外務省の役人にしても「安倍に忖度」しすぎた結果だと思う。例えば「プーチンはしたたかだからあまり調子に乗らないように」と安倍に箴言できる人間がどれほどいるのかわからない。おそらくいないであろう。何しろ役人の人事は安倍とそのイエスマンに握られているのだから。

通算22回目のプーチンとの首脳会談で安倍は通訳を交えた個別会談でそう言われたのではないようで、聴衆や中国などの首脳の前であっけらかんとプーチンに言われた。それも今年中というたった3か月余りのうちに70年の膠着状況から抜け出そうというわけだ。

おそらく今年も来年も対露平和条約締結など、安倍も外務省ももちろん首相官邸もみじんも考えていなかったのではないか。この膠着状況が続く限り、拉致問題を利用し、北方領土問題を利用してきた大きなツケが回ってきたと感じる。

あまり「外交の安倍」などと吹聴すべきではない。単に金をばらまいているだけなのだ。

2018・9・13 10:00am