現代時評《河野洋平氏の良識》片山通夫

「70数年前に日本は決心したじゃないかと。尊い命を犠牲にして、我々今ここに繁栄を得ているのです。決して忘れません、決してあの過ちは繰り返しません。何十年も言い続けて、その結果がこの政策転換というのは、私はあり得ないと、そう思っているのです」「安倍政治というものに非常に大きな問題があったと思います」
元衆議院議長・河野洋平氏はTBSの「報道特集」という番組でこう語った。専守防衛という言葉がある。長年我が国は先の戦争で負けてからこの専守防衛を旨としてきた。なんでも戦後初めて発表された防衛白書にははっきりと専守防衛が謳われていた。
防衛庁が防衛省に格上げされたのは2007年1月のこと。以来、防衛省はその組織の肥大化を目指してきたといえよう。肥大化してゆくと同時に専守防衛という言葉が忘れられてきて、仮想敵を作り、その仮想的に対抗するために、軍備を整え、肥大化してゆくという悪循環が繰り返されてきた。

特に安部政権の流れを継いだ岸田内閣は、安保関連3文書を閣議決定するというどさくさの決定を行い、同時に予算を大幅に増やし、敵基地先制攻撃を是とすることになった。本来なら戦後70数年の流れを、国会の決議を経ずに大幅な政策変換を行ったことは国民の意志をないがしろにした暴挙と言わざるを得ない。岸田総理はこの敵基地先制攻撃能力を専守防衛のうちにあると昨年12月16日に次のように話した。。
「憲法、国際法、国内法、そして専守防衛をはじめとする基本的な姿勢は、これからも堅持していきます」

河野洋平・元衆院議長はまた同番組(報道特集)で次のように語った。
「70数年前に日本は決心したじゃないかと。尊い命を犠牲にして、我々今ここに繁栄を得ているのです。決して忘れません、決してあの過ちは繰り返しません。何十年も言い続けて、その結果がこの政策転換というのは、私はあり得ないと、そう思っているのです」
そして政策転換の起点は、安倍内閣だという。河野洋平氏は「安倍政治というものに非常に大きな問題があったと思います。全体の流れを先に作ってしまうというこの手法は、議会制民主主義の手法としては、ちょっとやっぱり違うのではないかと私は思います。安倍内閣、そして菅内閣、岸田内閣と内閣が3つ変わって、岸田さんがバトンを受け取ったときには、かなりもう勢いがついていて。この勢いを簡単に変えるとか止めるとかいうことは、なかなか難しい状況であったことは想像できます」

河野洋平氏は、中国をはじめとする外国とは力で対抗するのではなく、「中国が自分の言い分を正当化して押しかけてきている。それなら、やっぱり話し合う必要がありますね。その努力をどのくらいしたのか。外交関係でこの問題をテーブルにのせて、真剣に議論したことはあるか。私はそういう情報を聞いておりません。現状の倍の国防力負担を国民にさせようという状況なら、どれだけその前に外交的努力が行われたのかを問わなければいけないと思います」と語る。

我々も今一度1945年とは言わないが、1970年の時代に還って「専守防衛」の意味を再考すべきではないか。そして外交というツールをいま一度考え直す必要がある。アメリカは対中国の最前線に日本をおいている。その日本の情報収集能力、つまり外交の能力にはほとんど価値を見出さないでいるように筆者には見える。足軽に槍を持たせて先兵とした戦国時代をほうふつとさせる。足軽には外交の交渉能力は必要ない。

ともあれ、我々日本は外交の力を発揮する必要がある。 河野洋平氏と同様の良識をもって・・・。