現代時評plus《生活防衛に走るロシア人達》片山通夫

EU各国やアメリカ、それにロシアのウクライナ侵攻に抗議する各国のロシア制裁でロシア国内はルーブルの暴落ともいえる事態に国民は銀行に殺到しているという。筆者はソ連邦崩壊直後のモスクワにいた。
地下鉄をおりて地上に出て驚いたことがある。寒い日の朝だった。
筆者の眼から見ると立派な身なりの女性達が列をなして地下鉄の乗降客にものを売りつけているのだ。手にはおそらく自分の家にある食器類をそれぞれが持って通る人の突き出して見せていた。つまり買ってくれと言うわけだ。銀で出来た食器にはちょっとだけ興味を持った。何しろロシア革命前のロマノフ王朝時代の銀器だとか…。それが本物かどうかはわからないかったが・・・。
けれど、先祖から伝わった銀の食器をソ連邦崩壊で食べるためとはいえ、駅に立って売るということの悲しさはひしひしと感じられる光景だった。

その後2000年になる頃、サハリンへ行くようになった。当初はまだロシア市民の生活が苦しくて、日本円や米ドルが幅を利かせていた。12人でロシア料理を堪能しウオッカやワインを飲んでも100米ドルで足りたことがあった。その頃もロシアの銀行は市民から信頼されずに所謂箪笥貯金が幅を利かせていたという話をあちこちで聞いた。
私の知っているサハリンの友人たちは決して裕福な人たちではない。だからそんなにお金を持っているわけではないだろうが、銀行を全く信頼していない。

そして今、ウクライナへ侵攻したロシアは西側の経済制裁でデフォルトに陥リそうだという。同志社大学大学院浜矩子教授は「ルーブル暴落の制裁効果はかなり大きい」としてロシアの銀行を国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除することの効果については見方が分かれていますが、私はかなり効果があると見ています。英紙フィナンシャル・タイムズもそのような論調です。  (毎日新聞記事

ウクライナとの戦争に踏み切ったロシアは私が見てきたソ連邦崩壊の時代と同じ道を歩んでいるようだ。