【609 Studio】email newsletter> 2020年9月29日 No.969

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◇◇現代時評《故・旭堂南陵さんの怒りの拳》
―小選挙区制への抗議表し―  井上脩身
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7月30日に死去した講談師、四代目旭堂南陵(本名・西野康雄)さんを追悼する記事が9月7日付毎日新聞に掲載された。筆者の上方芸能史家、荻田清・梅花女子大名誉教授によると、旭堂さんは明治時代の政治講談を意識して国会議員になったという。記事を読んで、社会党の参院議員になった旭堂さんが1994年の参院本会議で小選挙区制移行に関する法案に反対票を投じる際、握り拳を突き上げて抗議を表す新聞写真が、私の脳裏によみがえった。旭堂さんが危惧したとおり、社会党は衰退の一途をたどり、自民党一強体制が構築される元となった。それが結果として、安倍晋三氏の7年8カ月にも及ぶ首相の座の居座りを許し、モリカケ・サクラ問題にみられる不公正政治がまかり通ることになった。
旭堂さんには、小南陵を名乗っていた1980年ごろに一度会った。高校を中退して旭堂さんの下で講談師を目指す一人の若者のけいこが茨木市の公民館の一室で行われ、私はこの若者を取材したのだ。けいこの合間、旭堂さんは私に「昔の講談を勉強しているところ」と、自らの近況を語った。昔の講談のなかに、明治の政治講談も入っていたのかもしれない。この日の取材対象が若者だったので、旭堂さんとあまり話をしなかったのが、今となっては残念だ。
調べてみると、明治時代、東京に井上仁太郎(後・伊藤痴遊)という講談師がいた。東京府議や衆院議員も務めた政治家だが、当時、「政治講談」という分野を開拓した講談師でもあった。政府が言論抑圧の一環として政談演説を禁じるなか、原敬ら大物を素材にした政界逸話などの内幕物で人気を博したという。
旭堂さんが井上の講談から影響を受けたかどうかは私には分からないが、1989年の参院選に社会党公認で兵庫選挙区から立候補して初当選した。井上のように政治家講談師になったのである。
1993年、日本新党の細川護熙氏を首班とする連立政権は衆院の選挙制度改革に取り組み、連立与党は小選挙区定数274、比例代表定数226の並立制案を提案。社会党はこの案に賛成し、党執行部は反対議員に説得に回った。11月18日、衆院で連立与党案が可決。1994年1月21日、参院本会議で採決されたが、社会党から17人が造反、連立与党案は否決された。この造反議員のなかに、田英夫氏らとともに旭堂さんがいた。
私は小選挙区制は誤りだと考えていた。冒頭に述べたように、旭堂さんが反対票を投じるさいに握った拳を突き上げた写真が載った新聞を手にし、「小南陵さんも反対している」と、私は意を強くした。旭堂さんは社会党からの離党を余儀なくされ、翌年の参院選で新党の平和・市民から立候補したが落選。政治家講談師は1期6年で終わった。
小選挙区制は一つの選挙区で得票1位だけが当選できる制度だ。それ以前の定数4~5の中選挙区制では、多くの社会党候補は3、4位で当選した。1位は自民党候補であることが多い。したがって小選挙区では、社会党を中心とする野党候補が当選できる可能性が低くなることは、誰の目にも明らかだ。比例代表で議席を得る道はあるが、限られている。得票数以上に自民党に有利に働き、民主主義の原則に反する――と考えた私は、賛成に回った社会党の意図が理解できなかった。予想通り、社会党は小選挙区制によって壊滅的打撃を受けた。衆院選でみると、当選者は1990年は136人だったが、新制度後、社会民主党(社民党)に改組した96年は15人にまで減り、2014年と17年には各2人と崖っぷちまで追い込まれた。

一方、社会党や民社党の議員らでつくられた民主党は09年の衆院選で308人が当選し、政権を奪い取ったが、12年は57人に激減。17年の衆院選の獲得議席は自民284、立憲民主55、希望50などとなっており、自民党に極めて有利な制度であることが立証された形だ。中選挙区制ならば自民党は200に届かなかったであろう。
モリカケ問題では公文書改ざんやお友だち優遇、サクラでは公私混同、加えてイエスマン忖度官僚の登用という安倍政権の黒いトグロがあぶりだされたが、安倍前首相は逃げ通した。安倍政治の継承を唱えて首相になった前官房長官の菅義偉氏も同罪であるが、菅首相はモリカケ・サクラ疑惑を隠蔽しつづける腹である。国民に背を向けてこうした傲慢無恥政治を続けられるのも、小選挙区制のもとで自民党は勝てるという確信があればこそであろう。
3年の衆院選では自民が237、民主177と獲得議席が拮抗、09年にはすでに触れたように政権交代が実現した。だが、結局は一時的なことだった。我が国では二大政党時代が夢でしかないことはもはや自明の理である。

私は一刻も早く小選挙区制を廃止し中選挙区制に戻すべきだと考える。泉下の旭堂さんも憤怒のおもいで拳を固く握りしめているのではないか、と心配である。

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◆編集長から:片山通夫
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しかし恐ろしい女性議員が自民党にはいる。安倍前首相の厚遇を受けて比例代表で当選した杉田議員のことだ。
彼女が今また物議をかもしている。毎日新聞によると《杉田水脈氏 性暴力被害者巡り「女性はいくらでもうそ」
問題発言繰り返す》とある。https://mainichi.jp/articles/20200926/k00/00m/040/183000c?pid=14613

彼女は過去にも「だったら結婚しなくていい」「コミンテルンが仕掛けた」などと異常ともいえる発言を繰り返し
てきた。あからさまな差別主義者だと見受けられる。安倍政権の8年足らずはこのような極右とも言えない、ある
意味人間性を疑われる人物が議員として存在し発言してきた。そして一部の国民は彼らの発言などをよしとしてき
た。安倍政治の継続性を言う菅首相はこのような議員の発言を許すのか。
今裁判になっている河合夫妻の買収事件だが首相とは昵懇の間柄だと聞いた。彼らとの距離をどうとるかで菅首
相、菅政権の立ち位置が分かる。菅さん、馬鹿な議員は早く切るべきだ。アンリ議員を当選させるために1億5千
万もの途方もない金をつぎ込んで、従来からの議員を見捨てた罪は重い。
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発行   2020年9月29日 No.969
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