取材手帖《童仙房余話》片山通夫

《童仙房の古老が童仙房に伝わる話を語る・その2》

オコナイという行事がある。滋賀県の湖北地方や滋賀県一帯、京都・南山城村や笠置町、木津などにもその行事は残っている。そして童仙房の隣の集落にもそれは残っているようだ。一般にオコナイとは五穀豊穣を願って主に西日本の各地で年頭に行われる伝統行事である。 近畿地方を中心に中部地方から中国地方にかけて伝承されており、特に滋賀県の湖北地方と甲賀市で盛んである。要するに農業を営む集落の民が神様や仏様に五穀豊穣を祈る行事で、年頭に行われることが多い。

「童仙房の隣の集落に野殿という集落の福常寺に納められた千躰仏は、童仙房から渡ったものだとここらの書物には書かれてますが、調べてみると、ちがうんです。童仙房という地名が、そもそも不思議でして、むかし千のお堂があったとかいう話も伝わっとりますが、そのへんから生じた誤解でしょう。野殿の千躰仏は、柳生藩から寄付されたものです」。童仙房の古老はこう断言する。いずれにしても、山深い郷に千躰仏が存在したことにも驚かされる。

その野殿の福常寺ではオコナイが行われている。京都府立山城郷土資料館発行の「花と鬼と仏」という特別展の資料に野殿の福常寺のオコナイが記載されている。