現代時評plus《「国民の敵」はだれだ?》片山通夫

自衛隊の幹部がジョギング中の国会議員に向かって「国民の敵だ」と叫んだとか・・。本人はこの言葉は言っていないと供述しているようだが、怪しいものだ。閑話休題、この言葉のほかにも「馬鹿」、「国益をそこなう」などと暴言を吐いた。さて、発言の事実関係は後日はっきりすると思われるが、なぜこの自衛官が「国民の敵」だと言っていないと否定しているのかが問題だ。この自衛官にとって「国民」とは何を指すのか、またなぜ野党議員を「恫喝」したのか疑問は多いが当人や自衛隊、そして防衛大臣のほうからの説明は今のところない。 ところで自衛官にはつぎのような法律上の制約がある。

自衛隊法(政治的行為の制限)

第六一条 隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない。
2 隊員は、公選による公職の候補者となることができない。
3 隊員は、政党その他の政治的団体の役員、政治的顧問その他これらと同様な役割をもつ構成員となることができない。
ここでは「自衛官は政治目的のために政治的行為をしてはならない」ときっぱりと定められている。ところが件の事件では防衛省の豊田・防衛事務次官や制服組トップの河野統合幕僚長はこのたびの事件でも、この条文には触れず「品位を重んじるよう定めた自衛隊法58条に抵触する恐れがある」「暴言と受けとられるような発言は不適切」という表現にとどめている。

その58条を次にあげる。

(品位を保つ義務)

第五八条 隊員は、常に品位を重んじ、いやしくも隊員としての信用を傷つけ、又は自衛隊の威信を損するような行為をしてはならない。
2 自衛官、学生及び生徒は、防衛大臣の定めるところに従い、制服を着用し、服装を常に端正に保たなければならない。

ここには一切シビリアンコントロールなどの制約はない。ただ自衛隊の品位を傷つけることはまかりならんと言っているだけである。自衛隊のトップからして問題のすり替えを行われているのだから、何をかいわんやである。

大方が心配するように、何しろ実力装置である。今にシビリアンコントロールが効かなくなって《クーデターまがい》のことが起こる危険がある。

防衛大学校ではどのような教育がなされているのだろうか。省庁が設置する教育機関なので一般の学校教育法などの制約は受けない。ということはほとんど国民の眼から見えないところで教育されている。国内最強の実力装置の中で。

改めて防衛大学校の教育内容からチェックする必要があると思う。
いったい「国民の敵」になりうるのはだれなのだ?!