びえんと《憲法違反の死刑執行》Lapiz編集長 井上脩身

――飯塚事件にみる司法の犯罪――

犯行否認のまま死刑を執行された久間三千年さん(ウィキペディアより)

【LapizOnline】32年前、福岡県飯塚市で小学生の女児2人が殺害された飯塚事件の再審請求審で、福岡地裁は6月5日、再審を認めない決定をした。事件の犯人とされた久間三千年さんは、判決が確定後に死刑を執行されており、死刑後に無実となる初のケースでは、と期待されたが、裁判官は「死刑制度護持」という国家のメンツにしばられたのだ。私は以前、「びえんと」のなかで京アニ事件を取り上げたさいに飯塚事件にも触れ、「報復主義に基づく死刑制度を考え直すよう」求めた。もし久間さんが無実であるならば報復される理由すらない。再審をすべきかどうかを判断するにさいし、「誤った死刑執行ではなかったか」との思いが裁判官の頭の片隅にすらないならば、「無辜の救済」という再審の理念は空念仏になる。 “びえんと《憲法違反の死刑執行》Lapiz編集長 井上脩身” の続きを読む

現代時評《岸田・時代錯誤首相の脱落》井上脩身

【609studio】岸田文雄首相は14日、自民党の総裁選に立候補しないことを表明した。私は3年前の自民党総裁選で、岸田氏が「令和版所得倍増計画」を公約に掲げて当選したときから「時代錯誤首相」だと考えていた。はたして「なにをやりたいのかわからない」「やりたいことのない政治家」などと、政治評論家らから酷評されることとなった。現在の日本がどういう状態なのかを適格に分析できない首相であれば、やることなすことすべてがちぐはぐになり、揚げ句の果て、首相の座を投げ出すのは当然であろう。 “現代時評《岸田・時代錯誤首相の脱落》井上脩身” の続きを読む

現代時評《上げ底先進国》井上脩身

~競争力低下と小選挙区制~

【609studio】衆議院に小選挙区制が導入されて30年がたった。世襲議員が増え、政治の劣化が指摘されるなか、スイスの国際経営開発研究所(IMD)が2024年版「世界競争力ランキング」を発表、日本は38位と低迷した。競争力の衰えは円相場にも影響し、1ドルが150円~160円と円安が続いている。小選挙区制が導入された1994年ころ、IMD競争力が5位以内、円相場が94円(1995年平均)であったことを思うと、経済力の急激な低下は目を覆うばかりである。政府はG7国家にふさわしい外見を装うために、借金をかさねてきた。その総額は1297兆円とCDPの2倍を超える。これを菓子折りにたとえるなら、外見は30個の饅頭が詰まっているようにみせかけ、実は20個しか入っていない上げ底経済といえるだろう。わが国は世襲政治家らによる″上げ底先進国″なのである。 “現代時評《上げ底先進国》井上脩身” の続きを読む

現代時評《出入国管理法改定とマクリーン判決》井上脩身

出入国管理及び難民認定法(出入国管理法)の改定案が6月9日、参議院で可決された。改定法は、難民申請が3回目以降の人を強制送還の対象とするなど、政府とって「好ましくない人」をこれまで以上に強圧的に排除できるようにした。私は先月、本欄で我が国の憲法の基本原則である国民主権の「国民」が日本国籍を有する者である点をとらえ、「人民不在の国民限定憲法」であると指摘した。 “現代時評《出入国管理法改定とマクリーン判決》井上脩身” の続きを読む

現代時評《人民不在の国民限定憲法》井上脩身

【609studio】憲法記念日の3日、各地で憲法を考える集会が開かれた。護憲派は「憲法9条が骨抜きにされている」と危機感を募らせ、改憲派は「改正のための世論づくりを」と訴える。こうした相も変わらぬ報道にうんざりきみの私の頭をガーンとたたく記事にであった。現憲法の大原則は「国民主権」であるが、アメリカ合衆国憲法でもドイツ基本法でも、登場するのは「人」であって、「国民」ではないというのだ。私は「憲法は国民のためのもの」と信じて疑わなかった。そうではなく、「憲法は人のためのもの」であるならば、日本国籍のない人にも憲法の人権規定が及ぶはずだ。政府は第9条を拡大に次ぐ拡大解釈をしてきた。ならば「国民主権」を「人民主権」と解釈しても何ら問題はあるまい。いま難民受け入れ申請者や外国人労働者が急増している。「国民限定憲法」の殻を破り、「開かれた憲法」へと柔軟に対応していかなければ、わが国は早晩、諸外国からソッポを向かれるであろう。 “現代時評《人民不在の国民限定憲法》井上脩身” の続きを読む

現代時評【説明責任という無責任政治】井上脩身

自民党は4月4日、派閥の政治資金パーティー裏金問題に関し、安倍、二階両派の議員ら39人を処分した。焦点の安倍派5人衆については、世耕弘成前参院幹事長を離党勧告にしたが、他の4人には党員資格停止か党の役職停止1年を科すにとどまった。岸田文雄首相は疑惑をもたれた議員に説明責任を果たすよう求めていたが、彼らは衆・参院の政治倫理審査会で押しなべて「関与していない」と木で鼻をくくるような答弁に終始した。NHKの世論調査では84%が「説明責任を果たしていない」とみているように、5人衆は首相の「説明責任」指示を歯牙にもかけなかったのだ。にもかかわらず、岸田首相は処分を行ったことで幕引きをしたつもりでいるようだ。首相のいう「説明責任」とは、何ら実質のともなわない空虚な「無責任説明」だったのである。 “現代時評【説明責任という無責任政治】井上脩身” の続きを読む

現代時評《東アジア反日武装戦線闘志の孤独な死》井上脩身

東アジア反日武装戦線″さそり″のメンバーとして指名手配されていた桐島聡さんと見られる男性について、警視庁は2月初め、DNA鑑定から本人の可能性が高いと判断した。1974年から75年にかけて海外進出している一流企業を標的に行われた一連の爆弾テロ事件。「桐島聡さん」は命をかけた革命闘争の意義を誰に語ることなく、ひたすら逃亡生活をつづけ、1月29日に死亡した。「桐島さん」の50年は何だったのだろう。私は彼に深い哀憐の情を覚える。
男性が桐島さんと断定されたわけでないので「桐島さん」とカッコづきで書くことをお断りしておく。 “現代時評《東アジア反日武装戦線闘志の孤独な死》井上脩身” の続きを読む

現代時評《能登半島地震が示した志賀原発の危険性》井上脩身

元日に発生した能登半島地震で、震源地から約50キロ離れた北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の敷地では震度5強を観測、変圧器が破損するなどの被害が出た。今回の地震は、能登半島北部の活断層が想定をはるかに超えてずれたことに加えて、複数の活断層が関連して動いた結果とみられており、同原発が「危険な活断層の上に建つ原発」である可能性が明らかになった。現在運転停止中の同原発について、再稼働に向けての安全審査が行われているが、この地震を機に、北陸電力は廃炉へと方針を180度転換すべきであろう。 “現代時評《能登半島地震が示した志賀原発の危険性》井上脩身” の続きを読む

現代時評《袴田事件の空想話》井上脩身

着衣が真正の証拠か捏造かで争われている袴田事件の再審裁判で、検察側は11月20日の第3回公判で、「(捏造というのは)現実性が乏しい空想上の話」と強調。一方、弁護側は袴田巌さんが犯行に使ったとされるクリ小刀について、「遺体の傷と合致しない」と述べ、真実の凶器でない疑いがあることを示した。事件発生から1年2カ月後、袴田さんが起訴されてすでに裁判が始まったなか、突然、5点の着衣が発見されるという不自然さにもかかわらず、検察側は「犯行後みそタンクに隠した」と主張してきた。その通りだとすれば、犯人はなぜ凶器もいっしょに隠さなかったのであろうか。4人も殺した重大かつ決定的証拠であるクリ小刀(刃わたり12センチ)を、犯人は「これでやりました」と言わんばかりに現場に置いてきたというのである。真犯人(なお生きているとして)にすれば、これこそ非現実的な空想話であろう。 “現代時評《袴田事件の空想話》井上脩身” の続きを読む

Lapizとは?

Lapiz(ラピス)はスペイン語で鉛筆の意味。
地球上には、一本の鉛筆すら手にすることができない子どもが大勢いる。
貧困、紛争や戦乱、迫害などによって学ぶ機会を奪われた子どもたち。
鉛筆を持てば、宝物のように大事にし、字を覚え、絵をかくだろう。
世界中の子どたちに笑顔を。
Lapizにはそんな思いが込められている。
Lapiz編集長 井上脩身