連載コラム・日本の島できごと事典 その121《通信制高校》渡辺幸重

メタバース空間内の教室(勇志国際高校)

国全体の人口減少が問題になっていますが、特に島では過疎化が進んでいます。そのため小中学校の統廃合も多く見られますが、一方では通信制高校の本校を島嶼部に置く学校法人がいくつかあります。島の自然や地域社会の教育力が評価されているのです。

島嶼部に本部を置く通信制高校には、天草諸島・牧島(鹿児島県出水郡長島町)の勇志国際高等学校、鹿児島県・屋久島の屋久島おおぞら高等学校、沖縄県・伊計島(うるま市)の角川ドワンゴN高等学校があります。N高校は鹿児島県長島町と連携し、町営の教育拠点「長島大陸Nセンター」でも島の中高生に遠隔授業を提供したり全国の高校生が地域課題に取り組むなどのプログラムも展開しています。

このうち牧島で地域の住民や団体と協力して伝馬船漕ぎなどのスクーリング体験学習を取り入れてい勇志国際高校は2024(令和6)年4月の入学・転入生として、日本で初めて「3Dアバターでメタバース教室に通う“メタバース生”」を募集し、注目を浴びています。
これは、最先端技術のメタバース(仮想空間)を利用してインターネット上に教室を設置し、学習者や教員が分身のアバターになって学習や交流を行うリモート教育の一種を導入するもので、このコースでは学校教育法や文部科学省の定める要項に則った形で教育を展開することで全日制の高等学校と同じ高校卒業資格を取得できます。海外を含めどこからでも編入学を受け付けるとしています。
メタバース技術を利用するときはゴーグル(VRヘッドセット)を使うことが多く、利用者は仮想空間の中で自由に動いたり交流することができます。リモートなのでどこにいても利用可能ですから本校が遠い島にあっても問題はなく、新型コロナに感染する恐れもないわけです。また学習者はアバターという実際の容姿や服装とは異なる様相をしているのでコンプレックスを抱く必要もありません。プログラミングによって学習効果の高い教材を必要に応じて作ることもできるでしょう。
勇志国際高校ではメタバース生に対してVR機器とPCを配布し、メタバース教室内でホームルームや授業を実施しています。担任制度も実施しているので自宅にいながら先生と対面して相談や進路相談もできます。

このほか、N高校でも入学式などのイベントでメタバース技術を利用しています。「日本の島」発信の新しい教育はさらに広がっていきそうです。
訂正:通し番号 211⇒121 に訂正いたします。2024/1/31 07:26