現代時評《傭兵会社ワグネル》片山通夫

盤石の体制だったと世界が考えていたロシアのプーチン体制の一角がほころび始めた。周知のように民間軍事会社ワグネルの「一日反乱」が起こったのだ。ワグネルは19世紀ドイツの作曲家のリヒャルト・ワグナーのロシア語。ちなみにウクライナで活動中の民間軍事会社の名称にモーツァルト・グループというのがある。ワグナーにしろモーツアルトにしろ迷惑だろうな。所でそもそも傭兵の歴史は古いようだ。
日本でも山田長政という人物がシャム(現在のタイ王国)で傭兵に加わった史実がある。
それはさておき、23年7月4日現在の筆者がつかんだニュース・情報によると、どうも今回の騒動の首謀者ワグネルのプリゴジンは隣国ベラルーシに逃れたようだ。亡命である。そしてまだ一週間にも満たないうちから、ベラルーシのルカシェンコの庇護下に入った模様、いやルカシェンコが呼び寄せた。プーチンと電話で打ち合わせた上のことらしい。そしてプーチンは元ワグネルの兵士をロシア正規軍と契約してその傘下に入るよう即している。一方ルカシェンコのベラルーシではワグネルの兵員のためにキャンプを2・3カ所のキャンプを設営したという。すでに訓練も行われているようだ。元ワグネルの本社(サンクトペテルブルグ)では社員(つまり兵士)を募集しているとか。これは現在の所停止ているような情報も流れている。

ここからは筆者の疑問と妄想である。

プーチンはなぜかプリゴジンをやすやすとベラルーシに追いやった。亡命だと言われている。そのうえでベラルーシではワグネルの兵員養成キャンプともいうべきキャンプを建設している。言っててみればルカシェンコは濡れ手に粟で「獰猛な民間軍事会社」を手に入れた。

プリゴジンとその配下の兵は決して「プーチン大統領に忠誠」を誓っているわけではないだろうと思う。給与を払ってくれる相手がボスなのだ。プーチン、ルカシェンコそしてブリコジン三人の今後の動きを見ればおのずからわかると思う。
しかしながらベラルーシがロシアを裏切ってプーチンを排除というシナリオはなさそうである。ルカシェンコ大統領にプーチンを裏切るだけの度胸があるとも思えない。それではプーチンとルカシェンコの思惑はなんなのだろうか。きっと凡人の筆者の決して思いつかない秘策を隠している可能性がある。

それはともかく、新生ワグネルはやはりウクライナ相手に戦うのだろう。そうなれば如何に民間人と言えども「ベラルーシが参戦した」と世界はとる。ルカシェンコにその覚悟があるのか。・・・とここまで書いていたらとんでもないニュースが流れてきた。ルカシェンコが「プリゴジン氏はロシアのサンクトペテルブルグにいる」と発表した。つまり元に戻ったわけで「この問題はまだ未解決」だと思える。
結局のところ、この問題はまだ未解決で、解決にはほど遠い。プーチンがそうやすやすと「世界に恥をさらされて」おとなしく引っ込んでいるとは思えないし、ルカシェンコの早々と「真相暴露」も考えて見れば理解に苦しむ。

とまれ、ルカシェンコにロシアの戦術核とワグネルと言う戦争のための装置を濡れ手で粟で手に入れさせるほどプーチンは甘くない。 (文中敬称略)