現代時評《北風と太陽》片山通夫

ベラルーシにロシア戦術核配備とNOTO加盟のフィンランド

参考図 イソップ物語「北風と太陽」

この二つのニュースに接してイソップの「北風と太陽」を思い出した。「北風と太陽が、旅人の上着を脱がす勝負をする。 北風が強く吹けば吹くほど、旅人は上着を飛ばされまいと必死になる。次に太陽が照らすと、旅人は自ら上着を脱ぎだす」という有名な話だ。

ロシアのプーチン大統領は、同盟関係にある隣国・ベラルーシに戦術核兵器を配備することで合意したと明らかにした。ルカシェンコ大統領の要請を受けた形だとか。これが3月26日だったと記憶する。一方ロシアと1340キロメートルもの国境線を持つフィンランドは従来の中立政策を大幅に変更してNATOに加盟申請し4月4日に加盟を果たし31番目の加盟国となった。
まさにイソップの寓話そのものだと言える。

戦場単位で通常兵器の延長線上での使用を想定した核兵器を戦術核と表現する。戦略核兵器や戦域核兵器に対して射距離が短い。米ソ間の核軍縮協定などでは射距離500km以下のものが戦術核兵器であると定義されている。その戦術核兵器をベラルーシに配備されると、戦力のバランスは大きく崩れる。しかし現在のところ自制していると見受けられる。たとえ、ロシアがウクライナで戦術核を使用したとしてもフランスのマクロン大統領は「フランスは核兵器による報復は行わない」としている。またNATOは新戦闘機の提供などでウクライナへの軍事支援を強化し、ロシアが占領する地域への肩入れを想定しているようだ。

つまり、万一 ロシアがウクライナで戦術核を使ったとしても、ただちに核戦争が勃発するわけではないかもしれない。しかし注意してみなければならないのは、プーチン大統領やルカシェンコ大統領がこの戦争で敗色が濃いと感じて(すでに感じているのかもしれない)「反転攻勢」の手段としての戦術核の使用に踏み切った時が怖い。
所謂「破れかぶれ」の戦争をプーチンやルカシェンコが突入した時のことである。そういう意味ではプーチンをとことん追い詰めないということも必要かもしれない。