現代時評《起こるか?クーデター》片山通夫

もちろん私の単なる推論でしかない話だが、昨秋から今に至るまで、ロシアの状況はあまり芳しくないようだ。当初、つまりほぼ一年前に満を持してウクライナに攻め込んだのはいいが、ウクライナ国境付近に車列64キロが衛星写真で撮影された。無論この車列はロシア軍のものだ。つまり何らかの理由で前に進めなくなったわけだ。通常の考えでは燃料の補給や車両の不備が原因なのかもしれないと思う。プーチン氏は「キエフ(今はキーフ)を1週間で陥落させる」予定だったようだ。その64キロメートルの車列は混迷する戦況の予兆だった。

エコノミストの最近の調査によるとロシアはますます「独裁化」しているという。
ロシア当局は侵攻開始以降、メディアや反体制派をかつてなく弾圧して来た。報告書は「ロシアは長年にわたり民主主義から遠ざかる傾向にあったが、今や専制国家の様相を呈しつつある」と評している。

独裁化しているというロシアに妙薬があるとすれば、自滅もしくは外的な力が働く、つまり敗戦を迎えること、もしくはロシア国内での変化、つまり独裁者の排除しかない。 プーチン氏にとって今や勝利するという目はなさそうだ。
力による独裁者の排除は所謂クーデターだが、プーチン氏には別に内なる敵が生まれつつある。私兵集団のワグネルである。ワグネルが兵員補充に刑務所にまで手を伸ばした時点で、正規軍の幹部はもちろん国民もそっぽを向きだしたのではないだろうか。ワグネルという集団が犯罪者を起用した時点で、国民はプーチンを見放した可能性がある。もちろん表だっていうわけはない。プーチンの弾圧が待っている。しかしクーデターは起こる可能性がある。なぜならクーデターは通常国民の支持のもとに行われる。

CNNによると、「ロシアでクーデター起きる可能性」をプーチン氏の元スピーチライターが指摘しだした。
⇒(CNN) プーチン・ロシア大統領の元スピーチライターで政治アナリストのアッバス・ガリャモフ氏は30日、CNNとのインタビューで、同国に軍事クーデターが起きる可能性も出てきたとの見方を示した。「ロシア経済は悪化し、戦争には敗れ、兵士は次々に遺体となって帰国する。国民はますますつらい目に遭い、なぜこんなことになっているのかと、政治の仕組みをみて説明を探そうとする。そして、ロシアが旧態依然の暴君、独裁者に統治されているからだという答えにたどり着くだろう」とプーチン氏を暗に名指しし、「この時点で軍事クーデターの可能性が出てくると思う」と主張した。
https://www.cnn.co.jp/world/35199375.html

プーチン氏が大統領の地位に留まり、この戦争を指揮している限りはクーデターは起こりにくい。ただしプーチン氏がロシア国民を大切にしている限りは。しかし新たに国民から50万人の兵を調達しようとするなら、支持は極端に低下する。ウクライナの惨状を、ワグネルの消耗を国民はすでに知っているだろうからである。
その時、正規軍が動く可能性がある。クレムリンを包囲、制圧し、各地で放送局や政府機関を抑えることになる。

相当地理的に広い国だから、またワグネルと正規軍のバランスが崩れれば困難はあろうがクーデターは起こる。それは明日かもしれない。(23/2/4記)