現代時評plus《ネットデモというツール》片山通夫

 「検察庁法案 今国会断念 定年延長反発受け 秋以降の成立目指す」2020/5/19 東京新聞電子版)

こんな見出しが躍った。記事には

「政治を動かす声」は、改正案が実質審議入りした八日夜に三十代女性がツイッターに投稿した「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグ(検索目印)付きの書き込み。コロナ対策に集中すべき時に法案を通そうとする政府・与党に批判の声が多く集まり、会員制交流サイト(SNS)を使った「ネット・デモ」の様相となった。

会員制交流サイトに一人の女性が投稿したのが始まりだ。瞬く間にリツイートされて、最終的には1000万を超えたといわれている。今回の政府・自民党の対応は様々な現象を生んだ。

公明党の山口代表は 検察庁法改正案に関して与党の一員であるのも関わらす“他人事”のように「政府として丁寧に説明していただきたい」とツイートし大炎上した。芸能人など著名人も相次ぎ「反対の声」を上げた。安倍首相が会見で「恣意的な人事が行われることはない」と打ち消したが「息をするように嘘を吐く安倍晋三」のいうことは信じられないとこれもまた大炎上。森法相が国会答弁でしどろもどろでかえって問題を大きくした。

おまけに元検事長らが改正反対の声を上げ、法務省に意見書を提出するという事態にまでなった。

18日に複数の報道機関が公表した世論調査では、軒並み内閣支持率が低下し、検察庁法改正案では反対が賛成を大きく上回った。ついに政府・与党は今国会での同法改正案の成立を見送った。

連休明けの8日から始まった国会審議はかくして継続審議となった。先述したように、30代の女性のツイートが、このように1000万の運動になり、18日に複数の報道機関が公表した世論調査で、軒並み内閣支持率が低下し、検察庁法改正案では反対が賛成を大きく上回ったことになった。

我々国民はもとより政府も国会もそして官僚も含めてSNSの持つ力を知った。政府の暴走をこのSNSというツールで止めることを知った。不正な事柄に対してSNSの力でNO!ということが出切ることを知った。

政治の闇を解明するにも選挙や検察の力を借りなくてもできることを知った。無論、その力を行使するためには今回のように検察OBや法曹界は言うに及ばず芸能界などあらゆるジャンルの人々の力が必要だ。そしてそれには誰ば見てもまっとうな理由がなくてはならない。

しかし我々国民はその力を得たことは確かだ。