現代時評《悪魔の誘惑》山梨良平

人気選手の周辺に事件が起きた。そう、大谷翔平の通訳が莫大な金額を大谷選手の口座から無断でひき出したと言う。

読売新聞オンラインから
https://www.yomiuri.co.jp/sports/mlb/20240326-OYT1T50031/

大谷選手の事件は今後アメリカの警察なり当局が明らかにしてゆくだろうから、ここでは述べない。最初にこの事件を知った時に考えたことをこのコラムで書く。

まず人間が誰しも持つ弱みが端的に表れたこと。今後心理学者なり専門家が解説してくれるだろうから、それを待つこととしたい。

古今東西、「博打で身を滅ぼした」という話は枚挙にいとまがない。無論、時として勝つ場合もあるだろう。しかしトータルで勝つことはないと思う。勝った時にそこでやめるかどうかは本人の意識次第。おそらく「もっと勝てる」という誘惑に負けることがあるのだと思う。運悪く負けた場合はその負けを取り戻す為に深みのはまる。
博打・・・。それは悪魔の誘惑なのだ。

今、大阪で万博の工事が滞りながらも主催者がごり押しで進めている。実際に出来るかどうか、パビリオンの工事が完了できるのかもおぼつかない状況だと聞く。先の東京オリンピックの時には汚職がはびこり、後味の悪い終わりかただった。無論逮捕者も出たことは記憶に新しい。知っての通り札幌五輪は霧散した。同じ轍を踏むことにならないかという危惧からだと思う。

今一つ心に引っかかることがある。その万博の跡地にIR(総合型リゾート)を誘致することになっている。そのIRにはカジノや国際会議場などが準備されている。保養地なども作られるように聞く。またショッピングセンター、レストラン、劇場なども。
今我が国の人口は高齢化して社会保障も充分に行われていないありさまだ。勢い現実逃避と夢を追う人が出てきてもおかしくはない。カジノはそこに集まる人を常習者化するのではないか。端的に言えば海外に出かけなくともそこで博打をうって大儲け・・・と言う夢を見させる。

大谷選手の通訳がどのようにしたのか、今後どのように事件が解明されるのか、また解明できるのかはともかく、深刻な問題であり、IRつまり「大阪博打場」の将来を見る思いだ。
きっと「悪魔の誘惑」に負けたのだと思う。

【参考】小河妙子氏 東海学院大学論文 「賭博行動に関する心理学的研究の展望」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/57/2/57_200/_pdf