現代時評《ソウルで考えたこと 002》片山通夫

ユジノサハリンスク空港のサハリン航空機

そんな状況の中、筆者はソウルへ行った。先週書いたようにサハリンから「永住帰国した友人たち」に会いに。結論から言うと少しばかり「期待外れ」だった。いや期待外れと言うのは失礼か。私は当初彼らは子供や孫たちをサハリンにおいてきて寂しい毎日を韓国で過ごしていたことを知っている。慣れない手つきでパソコン教室に通ってサハリンとのやり取りを目指して頑張っていたことも知っている。ようやくパソコンにも慣れてインターネットの世界にも慣れ、サハリンに置いてきた家族とのやり取りも順調になってきたし、サハリンとの行き来も、韓国の大手航空とサハリンの航空会社のユジノサハリンスクへの相互乗り入れで3時間で行くことができた。筆者はそんなことを思い出しながら、ソウル・仁川空港に着いた。

ところが彼らは実にあっけらかんとしていた。まずユジノサハリンスクへの行き来だけは困っていた。つまり先の述べた直行便がなくなっている。飛んでいないのだ。これはこの戦争の最大の影響であろう。直行便はなくなったが、良くしたもので、日本海側の韓国の港から、ウラジオストック(ロシアの港町)へ向けて船が出ているので、ウラジオストックまで行くことができ、その後ウラジオストックからユジノサハリンスクへは国内便が飛んでいる。また最近はソウルから中国のハルビン乗り継ぎでユジノサハリンスクへ飛べるようだ。ただ航空運賃は高いという。

また日々の暮らしはソウルもしくはその近郊なのでさほど不便は感じていない。ロシア政府からも年金が出ている。無論この年金はロシア通貨のルーブルでロシアの預金口座に振り込まれる。韓国では別途、韓国政府からの年金が韓国通貨で支払われている。

一方ロシアの状況はニュースを聞いたので細かく知っていた。韓国はテレビの有線放送が100チャンネル以上あるのでその中でロシアの放送もある。無論ロシア語のニュースも流れるのでそれを見ているようだ。ただ最近プーチンが年金を上げた。老齢基礎年金の満額は67歳以下の人(新規裁定者)は66,250円/月、68歳以上の人(既裁定者)は66,050円/月。
どうもプーチンは来年大統領選があるのでか、年金の支給額を上げたように思える。

また国内のみならず、ソウルでもロシア人にはプーチンの人気は高い。だからか、サンクトペテルブルグの市民でキム・ボクオンという女性の長男が国軍に志願してウクライナで戦死した。これにはソウルのサハリン韓人社会に衝撃を与えた。みんな彼女を知っていたからだ。ただ戦争の犠牲者以外でコロナのウイルスで亡くなった人は多い。筆者の友人の奥さんも犠牲になったと聞いた。

プーチンが昨年11月に言った言葉が気になる。
《動員兵の母親に「人は必ず死ぬものだ」》。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20221126-OYT1T50234/

(次週に続く)