現代時評《「負け犬の遠吠え》山梨良平

安倍首相は衆議院本会議での答弁の際、南クリル諸島(=北方四島)について、日本の主権が及ぶ島々であり、日本政府によるこの立場に変更はないと述べた。また、安倍首相は、日本政府による一貫した立場として、この立場がクナシル島(国後島)、イトゥルップ島(択捉島)、シコタン島(色丹島)、ハボマイ諸島(歯舞群島)の4つの島々全てについて帰属を確定したうえで、これに基づき平和条約を締結するということにあると付け加えている。(2019年01月30日 15:46 スプートニク)

 その前に同スプートニク(2019年01月21日 21:54)は

 明日22日に予定されているプーチン露大統領と安倍晋三首相の会談には、ある種の懸念が持たれている。ロシア外務省はこれより前、南クリル(日本で呼ばれるところの北方領土)に関する1月初頭の安倍首相の発言や日本での報道等について、厳しく批判した。それ以外にも、セルゲイ・ラブロフ外相は自身の記者会見で、「主権に関する問題は協議の対象ではない、これはロシアの領土である」と、直接的なコメントを惜しまなかった。と、伝えた。

 このような前提のもと、交渉は果たしてどのように収まって行くのか、我が国の政権の行方とともにいささか気になるところである。

 まず、ロシアのプーチン大統領率いる政権と、我が国の安倍首相が率いる政権の格差が残念ながら歴然としていると思わねばならない。簡単に言うと、本来我が国の外務省があらゆる、たとえそれが安倍政権にとって不都合な情報でも、安倍首相に伝えなければならい。しかし、おかしなことに、安倍政権に忖度なのか遠慮なのか知らないが、新しい情報を寄せているとは思えないのだ。

 そのひとつがラブロフ外相が「主権に関する問題は協議の対象ではない、これはロシアの領土である」と彼の記者会見で言い放ったということだ。通常このような場合、前もってすり合わせてからにするのが常識だ。わが外務省はこんな情報も事前に手に入れていなかったのかと不安になる。もっと言えばわが外相はその時どうしていたのか。

 まだある。北方領土と言う呼び名を「南クリル」と名称変更するべきだと、かの外相はのたまったとか。

 これに対して安倍官邸は、筆者の知る限り、官房長官がちょこっと反論したに過ぎない。大人の対応ともいえるが、いうなれば「負け犬の遠吠え」しかないと思うのだが。

 また安倍首相は「二島返還と平和条約締結」にこだわっている。いわゆる56年の日ソ共同宣言には平和条約の締結後に、北方四島のうち色丹島と歯舞群島を引き渡すと記されている点にである。残念ながら安倍首相の頭には今年行われる統一地方選と参議院選の対策でこの領土問題を利用しているとしか思えない。

 過去にも、拉致問題やミサイル脅威など、その時目についた事件などを徹底的に利用してきた。しかし今度のプーチン大統領とその政権を相手に、選挙のために利用しようとするのは、無謀だと感じる。

 とにかく役者が違うのである。戦争マニアの安倍首相と、武力で各国を抑えてきて、今なお戦争が常態化しているロシアとでは…。また北朝鮮相手では、相手が表に出てこないからこちらでキャンキャン吠えているだけだった。トランプ大統領とは仲がいいといわれているが、単に武器を大量に買わされているだけで、ビジネスマンが、馬鹿な顧客に売りつけただけ…。

 もうちょっと我々国民も冷徹な目で政治を、安倍政権を見るべきだ。