現代時評《同性婚容認と夫婦別姓否定の混在》井上脩身(Lapiz編集長)

同性同士の結婚を認めないのは、「法の下の平等」を定めた憲法に違反するとの初めての判決が3月17日、札幌地裁で言い渡された。婚姻に関する「両性の合意のみに基づいて成立」との憲法24条の規定は男女の結婚を前提としている、というこれまでの常識を180度変える画期的な判断である。一方でその2日後の19日、岡山県議会は、選択的夫婦別姓制度反対の意見書を採択した。この意見書の本質は現憲法を否定し、明治憲法下の家父長的家制度への回帰を求める復古主義である。21世紀にふさわしい新たな価値観を見いだすのか、それとも人権を抑圧する19世紀国家に回帰するのか。戦後、民主主義を基調として国づくりを進めてきた我が国は、20世紀が終わって20年がたった今、重大な岐路に立っている。 続きを読む 現代時評《同性婚容認と夫婦別姓否定の混在》井上脩身(Lapiz編集長)

現代時評plus《京都国際髙校》片山通夫

雨で一日延びた甲子園。いずれも初出場同士の京都国際高校と柴田高校(宮城)の試合が24日行われた。試合の模様は下記を参照していただくとして、筆者はこの京都国際高校に関してすごく思い入れをお持ちの方と親しい。在日韓国人の組織・在日本大韓民国民団が発行する民団新聞の元記者鄭容順さんだ。名前の通り彼女は在日韓国人2世。
LapizというWebマガジンに、その思い入れの詳細が書かれている。少し長いが紹介したい。 続きを読む 現代時評plus《京都国際髙校》片山通夫

◇現代時評《謎の国 ロシア》片山通夫

およそ過去も現在も、そしておそらく将来も謎に満ちた国と言えばロシアがある。決して国全体が裕福ではない。おまけに言葉は複雑だ。最も西欧から見れば漢字を使う国である日本や韓国、中
国、台湾なども不可思議な国に見えているのではと思うが…。面積こそ世界一だが、人口は約1億4000万で日本をわずかに上回る程度。経済規模は日本の3分の1以下、米国の10分の1以下で、世界で12位。G7各国はもちろん、韓国をも下回る。
まず民族的に言えば150とも200ともいわれている民族がすむ多民族国家である。
おまけに言語もその数だけ存在する。勿論一般的にはロシア語で生活している。例えば筆者がよく知っている朝鮮民族は、北朝鮮語や韓国語などを彼らの家庭などで使われているが、最近はほとんどロシア語しか使われない。

プーチンもロシア正教徒?!

また宗教は今やロシア正教が主だが、ソ連邦が崩壊した今、世界のあらゆる国から様々な宗教が静かに浸透しているし、多民族国家の帰結としてイスラム、仏教そしてユダヤ教までも存在する。
最もソ連時代は表向きは「宗教は自由」だったが、スターリンよって、そのあとのフルシチョフによって、徹底的に迫害された。
しかし不思議なことに、ソ連邦が崩壊したとたん、ロシア正教はたちまち復活した。今や元KGBの将校だった現大統領もロシア正教徒らしい。宗教を徹底的に弾圧したソ連時代とは一線を画し、ロ
シア正教会を保護してもいる。2007年のロシア正教会と在外ロシア正教会の和解を斡旋し、和解の聖体礼儀に出席もしてスピーチを行った。イスラームに対してはロシア正教会ほどに結び付きはな
く、ロシア国内でのイスラーム主義勢力の監視・活動制限、コーカサス地方では武装イスラーム主義勢力との対決姿勢を鮮明にしてもいるが、タタールスタンのカザン・クレムリンにおいて巨大な
モスクも再建したシャイミーエフのような穏健的な存在とは協力関係を築くなど、硬軟織り交ぜた対応がみられる。また、ユダヤ教も庇護しており、ベレル・ラザル首席ラビとは友好関係を築いて
いる。

地図から消され、世界から隠された旧ソ連の「閉鎖都市」

ソ連時代は閉鎖都市というのがあった。いや、今もあるらしい。
ロシア・ビヨンドによると、ソ連時代に創設された、閉鎖都市という、重要な戦略施設が隠され、厳重な警備で隔離されていた街は、現在でも残っている。特別な許可証がなければ、ここに立ち入
ることはできない。
閉鎖都市が最初にあらわれたのは1940年代の終わり。ヨシフ・スターリンの命令で、核兵器開発計画が始まり、ソ連国内の辺境の地に、極秘の都市がつくられていった。これらの街は地図にも載
ることはなかった。

ロシアに関する謎を読むのはとても興味深い。悲劇的なのは日本の敗戦後のシベリア抑留、チェルノブイリ原発事故なども。またウクライナを通ってヨーロッパに伸びるガスのパイプライン。時にはこのパイプラインのバルブを閉めるという暴挙もやってのける国だ。
まだまだおまけがあるがとても書ききれないほどだ。何しろ鉄のカーテンを西側との間に閉めていた。今回はこの辺で・・・。

◇現代時評《緊張高まる日露間》片山通夫

宗谷海峡図

なぜか日露間の波が高くなってきた。ちょっと紹介する。

*ロシア、米国が日本にミサイル配備すれば報復と警告3月12日、ロシア外務省は、米国が日本に地上配備型ミサイルを配備したら報復すると警告した。インタファクス通信が報じた。(モスクワ発ロイター)
*ロシア、「宗谷海峡や津軽海峡の閉鎖」に関する日本の外交評論家の主張に反応 ロシア議会下院(国家会議)国際委員会のドミトリー・ノヴィコフ第1副委員長は11日、ニューズウィーク日本版に9日に掲載された日本の外交評論家で元外交官の河東哲夫氏の「北方領土問題で『変節』したプーチンとの正しい交渉術」と題したコラムで、河東氏が日本はロシア政府に領土問題を解決する重要性を意識させるために「例えば宗谷海峡、津軽海峡(ロシア本土と北方四島間の主要な補給・物流ルート)をいつでも閉鎖できることを示す」べきだと主張したことについてコメントした。
ノヴィコフ氏は、河東氏の主張に基づくと、日本で所謂「北方領土」問題と呼ばれているテーマを再び悪化させたいという願望が日本の政治エリートに再び生まれたような印象を受けると述べた。 続きを読む ◇現代時評《緊張高まる日露間》片山通夫

現代時評《「止まらない暴走列車」と言われて・・・》山梨良平

【ロンドン時事】英紙タイムズ(電子版)は3日、今夏の東京五輪・パラリンピックについて「中止する時が来た」とするコラムを掲載した。筆者はリチャード・ロイド・パリー東京支局長で、「(新型コロナウイルス)感染を拡大させるイベントは日本だけでなく、世界へのリスクだ」と主張した。
そのうえで筆者は日本が「一旦決めたらその計画を止めることができない国だ」としてスポンサーや日本のマスコミが中止すのための意見を出すべきだと断じている。
それにしても「止まらない暴走列車」とはよく言ったものだ。この表現はまさに適格だ。一旦決めたら止めようがない官僚組織、政治家というわけである。今度の場合、リスクは日本だけではない。世界中がそのリスクを負うことになる。
暴走列車を止めることが出来るのは、スポンサーでしかない。例えば森前会長の「差別発言」に怒りを込めて「辞任すべき」と発言したのは、米、放送局だ。最大のスポンサーである。

日本のマスコミもスポンサーになっている。おそらく護送船団方式で、横並びの精神を大いに発揮しているのだと推測される。本来編集権と経営権を明確に分離独立させるべきなのに、護送船団はお互いに影響しあう関係になり下がった。NHKをはじめ、特に放送界がひどいと感じられる。

いずれにしても、「暴走列車」の表現は適格だが悲しい。

Lapiz2021春号は順次発行しています。

 

LAPIZ2021春号 Vol.37

《Lapizとは》Lapiz編集長 井上脩身
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《巻頭言》Lapiz編集長 井上脩身

ジョン・ウェインもびっくりトランプ西部劇

大統領選の投票の際、銃で武装するトランプ支持者 (ウィキペディアより)

私が所属している川柳の同好会の昨年11月の句会に投句した拙作です。11月3日に行われたアメリカ大統領選の投票に際し、バイデン支持者を威嚇しようと、熱狂的トランプファンが投票所周辺で銃を構えていました。MORE