
かなりおおらかな時代、飛鳥に都があった時代の話。額田王は彼女の和歌を読む限りだが「恋多き女」だったようで、言い換えれば相当情熱的な女性だったとボクは思えるのだけど。勿論ボクだけでなく皆さんもそうだろうけど・・・。
彼女は大海人皇子のかつての妻で十市皇女(とおちのひめみこ)をもうけている。そして天智天皇(中大兄皇子)の寵愛を受けている。ご存じの通り天智天皇は天武天皇と兄弟。
そして額田王はその誕生から謎に包まれていて、その生涯ははっきりしない。歴史家はこの点、きっとイライラしているだろうが、ボクはあまり、いや飛鳥人(あすかびと)のごとくおおらかに彼女の生涯を詳しく調べようとも思わない。勿論断言できるがそんな学究的能力もない。
万葉集に彼女の作と言われている長歌3首、短歌10首が残っている。中でも有名なのが、
あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る
と言う一首だ。なんと大胆なと思われる歌の意味を書く。
一首の意味は「あかね色をおびる、紫草の野を行き、その禁じられた野を行きながら、野の番人は見るのではないでしょうか。あなたが袖をお振りになるのを」
もうすでにお判りだろうが、ここでいう「あなた」は大海人皇子であり、愛情の表現であろう袖を振るあなたを、野の番人に見られているかもしれないと案じている額田王。この時彼女が詠んだときには、大海人皇子とは別れて、天智天皇(中大兄皇子。大海人皇子のお兄さん)と恋人関係にあった。酒席にいた大海人皇子は、この歌を聞いて、歌を返す。それが
紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我恋ひめやも
なんともおおらかで楽しい恋と酒の戯れの話。粋でおおらかな万葉人(まんようびと)とも飛鳥人といえる。
ボクたちの時代はこうはゆかないだろうと少々うらやましい。ねえ、ご同輩。