昨年末に東京新聞を読んでいたら《大量雇い止め訴訟、東京都が「請求棄却」求める 原告スクールカウンセラー「専門職としての心理職を軽視》と言う見出しの記事が目に留まった。(https://www.tokyo-np.co.jp/article/375677)
東京だけでなく大阪など大都会にも時折みられる「行政側の傲慢さ」や「国民軽視」を感じるのは筆者だけか?。例えば石川県も能登半島の昨年元旦の能登半島地震や豪雨などの自然災害に県がどのように立ち向かったかが問われている。これは福島県の東日本大震災や福島の東京電力の災害などから感じられる「地方自治体の傲慢さや国民軽視」だ。 “新春・現代時評《住みよい町を今年こそ》山梨良平” の続きを読む
ご挨拶
明けましておめでとうございます。
本年もよろしく御願い申し上げます。
2025年1月1日
昨年から色々考えることが多くなりました。
わが身をめぐる時の流れが、瞬く間と言えるほどの速さに戸惑い、はたまた、今やりかけている写真作品の制作の終わりの見えぬもどかしさ。考えてみれば、80年を生きてきたわけです。当然と言えば当然なのかもしれません。昨年から私が80歳になった記念に纏めだした写真があります。大阪の町や神戸の町などを、私にとっては「新しい感覚」で(ホンマかいな?)撮影したものを纏めております。近場で彷徨いながら撮った写真です。今後Web上で順次掲載してゆきますので是非ご覧ください。
大津絵の筆のはじめは何仏 芭蕉
挿絵は鬼が僧衣をまとっている絵で、慈悲ある姿とは裏腹な偽善者を諷刺したものです。鬼の住まいは人間の心の内にあるということで、描かれた鬼の角は、佛の教えである三毒(貧欲・瞋恚・愚痴)いわゆる人々の我見、我執であると言えます。人は自分の都合で考え、自分の目でものを見、自分にとって欲しいもの、利用できるもの、自分により良いものと、限りなく角を生やします。大津絵の鬼は、それを折る事を教え、鬼からの救いを示唆しているとも言われています。
【609 Studio】email newsletter 2024年12月31日 #1188
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【609 Studio】email newsletter 2024年12月31日 #1188
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世界の話題、LAPIZ編集長・井上脩身氏のコラムなど多彩な話題満載!
なおLapizOnlineは609studioと統合いたしました。
また諸般の事情によりサハリンの話題は都合により当面休止いたします。
購読無料!
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◆●◆ ご挨拶 ◆●◆
本年もありがとうございました。
来る新しい年もよろしく御願い申し上げます。
皆様のご多幸をお祈りいたします。
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◆現代時評plus《カメラが欲しい》片山通夫
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今夜は大晦日。突然だがNikonSPと言うカメラが欲しい。Nikon SPは、1957年
(昭和32年)に発売されたNikonSシリーズの最高峰モデル。SシリーズはNikonの
レンジファインダーのカメラのシリーズだ。
無論35mmフィルムカメラ。
世は諸物価高のなか、今時「フィルムカメラ」なんて不謹慎にも程があるとあち
こちから聞こえてくるようだ。簡単に言うと36枚撮りのフィルムを買って撮って
現像しプリントするには大枚をはたかなければならない。ちなみに、いまだにフ
ィルムカメラに拘って、デジタルカメラを持っていない友人に聞くと一万円仕事
だと・・・。つまり彼は最近写真を撮っていない。スマートフォンに定番で付い
ているカメラもおそらく使い方も知らないだろう。
だいぶ以前になるが、ある知り合いの方の話だが、LeicaM3というカメラをお持
ちだった。深夜、家人が寝静まった頃(ここが大事!)、件のカメラをおもむろ
に取り出し、好きなブランデーを傾けながら、シャッターを切る。深夜の静寂の
中で、そのシャッター音に耳を澄まして聞くのが至高の楽しみだと話されていた。
その時は「へえー、そんなものか」と思っただけだが、最近とてもよくわかる気
がしてきた。
カメラは簡単に言うと写真を撮るための道具であり、単に機械だ。しかし単なる
道具ではないような気がする。形や写り具合、それに機械的に丈夫か、故障は?
と色々考えて選ぶ。そうすれば愛着も湧くというものだ。ブランデー(ボクの場
合はウイスキーだ)を傾けながら深夜に好きなカメラに向き合う様はいささか妖
しいと我ながら思う。
それでも「カメラが欲しい。「NikonSP」復刻版でいいから・・・。
・・・と無性に思う晦日の今日この頃…。そういえば明日は新しい年だ。お年玉
に誰か・・・。まあ無理だろうな。初夢は夢と消えるのみ・・・・。
皆様。よいお年をお迎えください。そして本年はありがとうございまhした。
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【出版案内】
新版 日本の島事典 単行本 2022/12/2
長嶋俊介 (著), 渡辺幸重 (著)
27年ぶりの改訂新版。収録島数、国内最多!日本の全容を総合知で集約した歴史
的大著?国土地理院地図情報をベースに有人島、人工島、無人島など約15,000島に加え、岩礁なども丹念に調べ上げ、島の現在を特定。
国境水域における国際関係が複雑化するなか、島国である日本の成り立ちと現状
を知ることのできる比類なき事典。 https://x.gd/i2TJY
出版社 三交社 (2022/12/2)
単行本 1600ページ
ISBN-10 4815540551
ISBN-13 978-4815540555
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◆朝鮮半島から(順不同)
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*北朝鮮「暴風軍団」、ドローンに苦戦の精鋭部隊 「撃墜方法」メモも
https://www.asahi.com/articles/ASSDX2CXMSDXUHBI01VM.html?iref=pc_extlink
*韓国の保守論客「尹錫悦弾劾事由は朴槿恵の1万倍…世の中をなめているの
か」 https://japan.hani.co.kr/arti/politics/52041.html
*「弾劾案可決号外セット」が1万ウォン…戒厳関連グッズ、韓国の中古市場で
活況 https://x.gd/Sb5IR
*181人中2人だけが救助…務安空港のチェジュ航空機大惨事=韓国
https://japanese.joins.com/JArticle/327973
*「尹大統領の愚かなクーデター…金正恩に完ぺきな贈り物」元欧州議会議員が
指摘
https://japanese.joins.com/JArticle/327505?servcode=500§code=510
*韓国統一部「北、対南機構をすべて廃止したと推定」
https://japanese.joins.com/JArticle/327818?servcode=500§code=510
*南西部の務安空港で旅客機墜落 28人死亡
https://world.kbs.co.kr/service/news_view.htm?lang=j&Seq_Code=89107
*「返品天国」韓国
1970年代、安月給だった韓国の外交官たちは、夫婦同伴のパーティーに着ていく
タキシードやドレスを買う金がなかった。苦肉の策として用いられた小細工が、
百貨店で服を購入し、パーティー当日に一日着用した後、翌日に返品することだ
った。筆者にこの話を聞かせてくれた主要国大使の妻は「値札を隠すのに冷や汗
をかき、服を汚さないように努力した」と苦笑いした。
https://x.gd/nuqBX
*韓国、史上初の代行の代行体制…大統領・代行連続弾劾
https://japanese.joins.com/JArticle/327952
*尹大統領「銃や斧で国会の扉を壊せ…4人1組で議員1人ずつ背負って出てこ
い」 https://japan.hani.co.kr/arti/politics/52033.html
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【出版案内】
「光太 虹の国に行く」 いのしゅうじ(本名・井上脩身) 著
中学1年生の光太が同級生のケイ子とともに、1万匹のタマムシが引く飛行機
に乗って虹の国に行き、虹の国の子どもたちと冒険をする物語。
詳しくは https://x.gd/x39ud
文芸社 刊 ISBN:978-4-286-24684-0
定価:1,320円 (本体 1,200円)
判型:四六上
ページ数:164
発刊日:2023/11/15
ジャンル:童話
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【出版案内】
片山通夫写真集 ”ONCE UPON a TIME”
アマゾンでも電子雑誌として販売中! https://onl.bz/EVvmBhx
60年代から撮り続けたドキュメンタリー220点あまりを収録した写真集。1960年
代のキューバ、「北送」と呼ばれた在日朝鮮人の祖国帰還の新潟港。ベイルート
の重信房子、ブルガリア、チェコ、ルーマニアなど東欧諸国の民主化や廃墟とな
ったチョルノブイリ、作者のライフワークとなったサハリンの戦後問題。そして
時代を映す日本の折々の風景をモノクロームで描いた作品集。オンデマンド印刷。
全286頁。モノクローム写真239点を収録。
発行 publishing house Lapiz
本体価格 5000円(税込)+送料(600円)
お問合せ・ご注文はメールで。
michiokatayama*gmail.com *→@に変えてください。
お名前、電話番号、郵送先など連絡先をお忘れなく。
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◇編集長から:片山通夫
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郵便代がとても上がったと言うことでもあり、来年の年賀状は極力e-mailで済まさせていただこうと思っています。無論およそデジタルとは縁のない仲間も居られますので100%とは行きますまいが・・・。
ご無礼の段、平にご容赦。
同時に本年はお世話になりました。新しい年も皆様にとって良いお年であること
をお祈りいたします。
609studio https://www.609studio.com/
◇混乱の極みと言っていいだろう。韓国の政情だ。大統領のみならず大統領代行
も弾劾の憂き目。激しい気性の民族だとは聞いていたがこれほどまでとは・・・。
我が国の国民とは大違いだ。
◇アゼルバイジャン機が墜落したと驚いていたが韓国機も。「韓国で旅客機が着
陸に失敗・炎上 179人が死亡したと報道」痛ましい事故が続く・・。
◇気象庁は年末にかけて日本海側に警報級の大雪に注意。帰省客を襲うよう。
皆様、お気をつけてください。
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【609 Studio】email newsletter
発行日 2024年12月31日 #1188
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現代時評《カメラが欲しい》片山通夫

【609studio】今宵は大晦日。突然だがNikonSPと言うカメラが欲しい。Nikon SPは、1957年(昭和32年)に発売されたNikonSシリーズの最高峰モデル。SシリーズはNikonのレンジファインダーのカメラのシリーズだ。
無論35mmフィルムカメラ。
LapizOpinion《Webメディアの台頭》一之瀬明
【LapizOnline】アメリカの話。 元メディア幹部のフィドラー氏は1980年代に「人々は紙に印刷された新聞を必要としないだろう」と唱えた。「新聞は持ち運びの出来る機器によって配信される。そして人々はそれを「読む」というわけだ。印刷された新聞を買うという行為は、端末に配信されるニュースを読むのと同等だ。勢い印刷工場でインクを使って、いや紙そのものを輪転機にかけ、トラックで運び、町の新聞スタンドで販売すると言うスタイルはすでに遅れている形態だと言わんばかり。 “LapizOpinion《Webメディアの台頭》一之瀬明” の続きを読む
現代時評《不正まかり通った兵庫県知事選》井上脩身
兵庫県知事選で再選した斎藤元彦氏がPR会社に報酬を支払ったことが買収に当たる疑いが浮上、県警や地検が捜査にのりだすことになった。だが、斎藤氏の選挙にメスを入れるべきなのは、むしろ立花孝志氏(「NHKから国民を守る党」党首)が斎藤氏支援のために立候補したことであろう。立花氏は候補者の地位と権利を「斎藤勝利のために最大限駆使した。斎藤陣営は候補者二人分の選挙運動を展開できた結果、111万票もの大量得票を上げたのである。これほど不平等・不公正な選挙はかつて例がない。公明・適正という公職選挙法の精神に反していることは明白だ。斎藤氏の当選は無効であるとわたしは考える。 “現代時評《不正まかり通った兵庫県知事選》井上脩身” の続きを読む
現代時評《視野狭窄》山梨良平
視野狭窄という言葉がある。医学上の言葉だろうが、その持つ意味は恐ろしい。
素人ながら調べてみたら《視野の一部が見えなくなったり、見える範囲が狭くなったりする状態で、両目で見ているときは気づきにくいことが多く、片目で見たときに気付いてもいつから狭くなったのかがわからないことが多い》とあった。 “現代時評《視野狭窄》山梨良平” の続きを読む
山梨良平の現代時評plus
現代時評plus《ノーベル平和賞と政治家の役目》
オスロから伝えられるノーベル平和賞の意味は「核の脅威」だ。ヒロシマ・ナガサキから80年になる今現在も「核の脅威」は増えこそすれ一向に減りはしていない。簡単に言うと核は世界の政治家の手中にあることは紛れもない事実だ。政治家の思惑で戦争がはじまり、ロシアはウクライナに攻め込み、まもなく3年が経とうとしている。ロシアのプーチン大統領は「核兵器の使用も匂わせて」ウクライナのみならず、西欧をはじめ世界に恐怖を与えている。そして今イスラエルはパレスチナ人を相手に戦争を仕掛けて一年。世界のマスコミや政治家たちは、この戦争を「紛争」だの「侵攻」だと矮小化することに余念がないのではない。そこには攻撃によって死体の山があり、瓦礫の山があり、食料もなく病院や子供たちが通う学校すら攻撃されている。
きっとオスロから伝えられるノーベル平和賞は「核の脅威のみならず」政治家たちのいうところの「紛争」や「侵攻」と言った戦い、つまり「戦争」をやめなければならないというメッセージだと私は受け留めた。
政治家は国境・立場の垣根を越えて協議し「戦争」をやめる手段を考えるべきだ。そうでないと人類の存続にかかわり、元も子もなくなる。
(ノーベル平和賞の授賞式が日本時間の10日夜、ノルウェーの首都オスロで行われた)
現代時評plus《前防衛長官に続き警察トップも拘束》
もうシッチャカメッチャカなのだ。警察トップの趙志浩(チョ・ジホ)警察庁長官とソウル警察庁トップの金峰植(キム・ボンシク)長官を内乱容疑で拘束されたという報道。韓国は歴代の大統領の末路、つまり5年の任期を無事終えたとしても、暗殺されたり逮捕されたケースが多い。理由は様々だが。
今回もややこしい6時間の戒厳令で側近が逮捕された。おそらくこれらの拘束・逮捕は大統領逮捕の布石もしくは前段階だと思う。
そして遂に大統領官邸の家宅捜査も。(2024/12/12午前現在)
現代時評plus《ネットメディアが選挙を導く》
今年は選挙の年だった。東京都知事選挙、衆議院選挙、兵庫県知事選挙とこの半年の間に大きな選挙が行われた。マスコミの世論調査とかけ離れた結果が表れた選挙でもあった。いわゆるSNSは不特定多数の、いわゆるマスコミの言う「無党派層」とも違う一定の層が存在することを見せつけた。SNSで話題になることが選挙での勝利の秘訣になりつつある。考えてみればインフルエンサーという種族も存在する。SNS等で世間に与える影響力が大きく、ビジネスとして情報発信している人物のことを指す。彼らはおそらく世の中の動向をいち早くつかみ、それをSNSなどで流布する手段に長けている。この手法を選挙に用いれば、現存するマスコミの何歩か先を行くことができる可能性を秘めている。うまくすれば現存マスコミがテレビや新聞で取り上げてくれれば、次からは自然に世の中に浸透してゆく。
ちなみにインフルエンサーは感染症のインフルエンザ(influenza)とラテン語の「流行」から来ており、語源は同じである。
現代時評plus《独裁の終焉》
シリアの首都・ダマスカスから、大統領とその家族はロシアへ亡命し「アサド王朝」とも称されたアサド家2代53年にわたる統治は終焉を迎えた。いやその前に我が国でも故安倍晋三を中心とした「安倍一派」と呼ばれる自民党内の独裁グループが安倍晋三の暗殺がきっかけで瓦解した。「親亀こけたら皆こける」。
韓国でも「大統領のクーデター」はたった6時間で終わった。
こうしてみるといわゆる「独裁」と言う政治手法は遅かれはやかれ瓦解する運命にある。独裁者はそこまで「刹那的」なのか。
現代時評《ユン韓国大統領弾劾》
韓国市民はその力を発揮した。長い間軍事独裁政権だった韓国が遂に韓国史上初めて弾劾で大統領をその地位から引きずり下ろした。筆者が思うに「弾劾に賛成しない議員には次はない」とのプレッシャーがかなりの力で働いたとみている。
韓国人の友人に言わせると「日本と違って韓国は騎馬民族で少々荒っぽい。日本は農耕民族で守りに徹しているが・・・」というわけである。農民一揆はなかなか起こりそうにない。
現代時評《「えらいこっちゃ」の韓国戒厳令騒動》片山通夫
韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が、3日夜に非常戒厳を宣言してからわずか6時間後に解除すると言う「事件」が起きた。
これを受けて韓国の最高検察庁は12月6日「特別捜査本部を組織し、今回の非常戒厳関連事件に対して厳正に捜査する」と発表した。国会と中央選挙管理委員会に実際に戒厳軍が投入され、戒厳宣言と指示過程に軍高官などが関与した点を考慮した措置とみられる。つまり言葉は適切ではないが「上からのクーデター」と言うよりも、やはり大統領の専制だったのではないか。 “現代時評《「えらいこっちゃ」の韓国戒厳令騒動》片山通夫” の続きを読む
編集長が行く《関東大震災と横浜・関西村 #3》文・写真 井上脩身

90年ぶりに表に出た写真帖
関西村はあくまで復旧・復興までの仮設の村である。1924年2月末、仮設バラック500棟を翌年2月までに廃止する方針が打ち出され、関西村では1925年2月25日、解散式が行われた。
関西村病院は神奈川県による小児科と眼科が中心の病院になり、村の敷地のほぼ中央に高等小学校を新設。警察は別の場所に移された。
戦後、この一帯は大規模な区画整理が行われ、関西村当時の建物はすっかり消えた。
わたしは講座の数日後、関西村の跡地をたずねた。火の川となった中村川の上に高速道路が通り、そばに1951年に建てられた市立中村小学校の鉄筋校舎が見える。その隣に埋蔵文化財センターの朽ち果てかかった鉄筋コンクリートの建物。建物自体が文化財のような風情だが、関西村当時にはなかったものだ。小学校の西隣に市の中村地区センター。講義室や体育館があり、健康講座など、市民のためのさまざまな事業が行われている。実は関西村講座は、南図書館と地区センターの共催で行われたのだ。
地区センターの担当者に「関西村の名残をとどめるものはりませんか」とたずねると、「何もない。歴史を語り継ぐための碑をつくりたい。それには少しでも多くの人に知ってもらいたいと、講座を開いた」という。「全くなにもないのですか」ときくと、「関西村記念写真帖」と「横浜市日報」を教えてくれた。
写真帖は2013年、市民から南図書館に寄贈されたもので、約10点の写真には関西村全景や病院、役場、小学校、奈良通りのバラックなどが写っている。関西村開設1周年を記念して撮影されたとみられ、医師、看護師らが集合した病院前の写真、児童が体操している南吉田第二尋常小学校の写真など、関西村の実態を知るうえで貴重な記録である。これらの写真が、震災から90年という時空を超えて突然表に出たことが、松本教授らが研究を始めるきっかけとなった。
写真帖のうちの数点は松本教授の論文を取り上げた横浜市資料室紀要第5号に載っていて、わたしも目にしていたのだが、地区センター担当者の言葉から、これらの写真が重要な資料であると知ったのだ。あらためて写真を見た。不思議なことに、写っている人たちから震災に対する悲壮感が感じられない。関西村にいれば日々の暮らしができるという安心感があるからであろうか。
「横浜市日報」は横浜市が発行した。同市内にあった横濱貿易新報など3新聞社の活字を拾い集めて、震災10日目の9月11日付からタブロイド判の新聞製作をはじめた。毎日、青年会・学校・神社などを通じて市民に無料で配布し、10月31日付の第51号まで発行された。第20号を除いて横浜市中央図書館が所蔵しており、ネットで読むことができる。
第1号の冒頭、横浜市長が「貿易都市としての横浜の面目を回復したい」との抱負を寄稿。「臨時バラック建造」(第5号)、「罹災者避難所竣工」(第10号)、「公設市場の設置」(第15号)、「学童の残存4万余、688教室必要」(第17号)、「震災救護病院開始」(同)、「救護材料陸揚げ」(第19号)など、関西村に関係する記事も掲載されている。
大正デモクラシーのなかで
わたしは「関西村」について二つのことを思った。一つは、大阪府をはじめとする関西各府県の支援への動きの早さである。救援のため人材を派遣するだけにとどまらず、震災5日後には被災者のための病院をつくることまで決めているのだ。国からの指示や命令でなく、関西の自治体がタッグを組んで素早くやってのけたという事実は驚嘆すべきことだ。関東大震災は大正12年のことである。たしかなことはいえないが、大正デモクラシーの風潮が関係しているのではないだろうか。
大正デモクラシーはおおむね大正時代に起きた政治・社会・文化の各方面での民本主義の発展、自由主義的な運動、風潮を指す。民本主義を唱えた吉野作造が「政治は民衆の利益のためにはからねばならない」と主張していたのを受けて、震災当時の土岐嘉平・大阪府知事は「民衆のために」と、躊躇せずできる限りの支援を図ったのであろうか。戦後、短期ながら首相になった石橋湛山は『大正時代の真評価』のなかで、大正デモクラシーについて「デモクラシーの発展史上、特筆大書すべき時期」と評価したが、関西村はデモクラシー発展の象徴と言えるだろう。
ではなぜ関西村のことが後世に伝承されなかったであろうか。これが、わたしが思いをめぐらすもうひとつのことだ。これも大正デモクラシーが関係しているように思われる。
関東大震災では朝鮮人大虐殺のほか、9月16日には、無政府主義者の大杉栄が憲兵大尉の甘粕正彦らによって殺害される甘粕事件が起きた。こうしたことから、大正デモクラシーは関東大震災によって終わったともいわれる。終焉時期については異論もあるが、昭和に入って軍国主義が大手を振り、政治は天皇国家のためであって、民衆の利益のためではなくなった。大正デモクラシーは否定され、「民衆の利益」のための関西村は「なかったこと」にされてしまったのではないだろうか。関西村によって多くの被災者が生き延びることができたにもかかわらず、伝承碑のひとつも建てられなかったのはその証左であろう。
新しい憲法が制定され、民主主義国として生まれ変わろうとした戦後になっても、関西村を見なおし、再評価する動きは起きなかった。1960年に9月1日が「防災の日」と定められた後も、関西村は歴史の底に沈んだまま浮き上がらなかったのだ。
関東大震災が起きた100年前と現在では都市構造や住宅、交通、インフラなど全ての面で状況は全く異なる。関西村と同じものを造ったところで、適合しないであろう。とはいえ参考にすべき点は少なくないであろう。少なくとも、「被災した民衆の利益のために」という精神は今も変わらないのだ。
2024年は、元日の能登半島地震で始まった。遠からざる将来、南海トラフ巨大地震が起きるといわれている。地震大国ニッポンはいま不気味な胎動のなかにあり、巨大地震対策は急務である。その具体策は当然のことながら「民衆の利益」のためのものでなければならない。
民主主義の観点から、今こそ関西村を見なおすべきときである、と訴えたい。(明日に続く)