散歩道《古老柿のふるさと 01》片山通夫

京都に宇治田原という町がある。山間部に位置した山里である。メインの交通は京阪電車宇治駅に向かうバスしかないという、いささか不便な町である。その町のホームページには「サルの位置情報」という項目がある。きっと野猿が出没するらしい。誰かがサルに友達でもいて、位置情報を流してもらっているのかもしれない。実はGPSをつけた猿がいるらしい。猿は群れで移動するから群れで把握するという。まあ、昨今のクマ出没注意よりはましかもしれないと思っていたら、近隣の市町村にはツキノワグマも出没するらしい。そんな宇治田原町は宇治茶とともに古老柿(ころがき)の産地である。土地に古くから伝わる話を紹介したい。
むかし、渋柿を甘くする方法が知られていない時代・・・。
あるとき村に一人の娘が現れて、干し柿の製法を伝えた。立ち去る娘の後を村人がついていくと、禅定寺(宇治田原町禅定寺)近くの岩場で姿を消したと思ったら観音の姿を現した。娘は禅定寺の本尊、十一面観音の化身だった。以来その干し柿を「一人の娘の柿」という意味で「孤娘柿(ころうがき)」と呼んだというのが古老柿のお話。

毎年11月になり稲の収穫が終わった田んぼに「柿屋」という建物が立ち上がる。柿屋の屋根をワラで葺くと強い風が吹いてもしなやかに動いて風が抜ける。その柿屋に皮をむいた渋柿を並べて干す。このようにして2・3週間干すと古老柿が出来上がる。ただ生産量は少ないようで、1月を過ぎると売り切れるという。古老柿の生産者に尋ねてもたら、メインの仕事は宇治茶の生産だという。そりゃそうだろう。