
さて「サハリン残留韓人」という呼び名に関して少し説明しておきたい。ソ連邦が崩壊し、ロシアがそのあとを継いでサハリンに住む朝鮮人たちにも春がやってきた。それまでは「朝鮮人」といえば北朝鮮人を指した。しかし「樺太の朝鮮人」たちは「元日本人」であり、韓国南部出身者が大半だった。ご承知のように、ソ連体制下では、韓国は「アメリカの傀儡政権」が支配する「南朝鮮」という位置づけだった。だから決して優遇されていたわけではない。いやそれどころか冷遇されていた。
日本の敗戦後、日本人はほとんどが帰国できた。しかし彼らは「日本人ではない」という理由で帰国の対象にはならなかった。それに日本が樺太に残したインフラ、例えば鉄道、炭鉱、パルプ工場などの操業に彼らを必要とした。
残留朝鮮人にとっては、支配者が日本からソ連に代わっただけの、長くて冷たい冬がやってきたわけだ。