「writer」カテゴリーアーカイブ

現代時評《低次元の少子化対策》井上脩身

イメージ・火星人

「異次元の人物がいるとしたら誰か」と尋ねられたら、ほとんどの人は大谷翔平をあげるだろう。子育て中の人に「異次元の子育てをしてください」と求めたら、どうするだろうか。大谷のような天才になってくれれば、とゼロ歳のときからバットとボールを持たせたとしても、異次元育児とはいえまい。赤ちゃんを多く産むための異次元の方法は、ときかれたらどうだろう。ほとんどの人は首をひねるにちがいない。当然だ。火星人にでもならないかぎり、次元の異なる「産めよ増やせよ」法などあろうはずがない。ところが岸田文雄首相は「異次元の少子化対策」を国政の柱に据えているのである。 続きを読む 現代時評《低次元の少子化対策》井上脩身

現代時評《袴田事件と大江文学》井上脩身

3月14日付新聞の一面に、袴田事件の再審を認める決定が出されたことと、ノーベル賞作家、大江健三郎さんが死去したことを伝える記事が載った。私は袴田事件の現場と大江さんの生家付近をたずねたことがあるだけに、偶然とはいえ不思議な感慨にひたった。私が知る範囲では、大江さんが袴田事件について語ったことはない。だが袴田事件の本質は、捜査機関において大江さんが言う「戦後民主主義」の無理解もしくは否定にあった、と私は考える。 続きを読む 現代時評《袴田事件と大江文学》井上脩身

「持続可能な開発目標」609studio編集部

SDGs (Sustainable Development Goals) への理解と取り組み

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2022年も終わりに近い12月。世間の年末のあわただしさを感じた頃の話。SDGs (Sustainable Development Goals) を考えるにあたり、さて自分に何ができるかと考えた。そう簡単に何かができるわけでもない。人に言うほどのことでもない。いや、黙って見過ごすこともできるがそうもいっておられない地球の環境だ。これでも必死に考えた。けどなんとなくテーマが大きすぎる。じっくり考えよう。今個人で思いつくことは紙の減量だ。ついては年賀状をやめようという安直さ。我ながら情けない。

参考:国連や我が国の関連サイトをあげてみる。
⇒地球環境を守りつつ、社会の繁栄を推進するために世界を変えようという運動の骨子となるもの。17の分野の目標から構成され、2030年までの達成を目指して、2015年9月の国連のサミットで全会一致で採択された。
我が国の取り組み
国連広報センター

 

訂正とお詫び

monolog の2023年1月16日の記事からタイトルというか、分類(カテゴリー)を変更させていただきます。この日の monolog から「Once Upon a Time 外伝」に変更いたします。
お詫びして訂正します。

現代時評《軍事費増強による戦争誘発の恐怖》井上脩身

政府は12月16日、「国家安全保障戦略」など安保関連3文書を改定、閣議決定した。このなかで、相手国のミサイル発射拠点などをたたく反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有を明記し、2027年度に防衛費をGDP比2%に増額する方針を掲げた。これによって同年度までの5年間で防衛費が43兆円と現行の1・57倍に膨れ上がり、法人税、たばこ税、復興特別所得税を増税する。敵基地攻撃能力はその文言から明らかなように仮想敵国を想定し、相手国基地をミサイルで襲撃しようというもので、専守防衛の範囲を逸脱した明白に憲法に反する軍事行動である。わが国は、平和憲法の精神をかなぐり捨て、軍拡競争に突入することになった。 続きを読む 現代時評《軍事費増強による戦争誘発の恐怖》井上脩身

書籍紹介

■新刊のお報せ《新版 日本の島事典 》編集室

*『新版 日本の島事典』* 上下卷計1,600頁 ¥77,000(税込)
監修・編著:長嶋俊介・渡辺幸重 三交社刊
2022年12月6日刊行予定
27年ぶりの改訂新版で国土地理院地図情報をベースに日本の島嶼(島・岩礁)を
精査し、新定義「周囲0.1㎞以上及び0.1㎞未満の名称付き自然島」による我が国
の島嶼数を初めて1万5,528とした。本書は、これを基に有人島など歴史的に重要
な約2,000の島の「沿革」を著し、都道府県別に無人島・人工島などを含む島嶼の
「現在」を示した歴史的大著である。上製本、ケース入り、分売不可。
◎内容
・はじめに 基礎データ(島数概要)
・第1部 日本の島々(解説編)
・第2部 島々の歴史(年表編)
・第3部 島嶼県別集計(データ編)
アマゾンで買う。

◆現代時評《旧統一教会のマインドコントロール》井上脩身

永岡桂子文部科学相は22日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対して質問権を行使した。旧統一教会に対する解散命令を裁判所に請求できるかどうかの調査として行われたもので、これに先立ち、岸田文雄首相は被害者救済に向けての新たな法案を今国会に提出する方針を表明した。こうした中で浮上したのが、宗教団体が行うマインドコントロールがどこまで許されるか、である。信仰は言うまでもなく個々人の心問題だ。憲法が保障する信仰の自由とは何なのか。1946年11月に公布されて以来初めてといえる憲法上の難問である。 続きを読む ◆現代時評《旧統一教会のマインドコントロール》井上脩身

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新刊書紹介

新刊のお報せ《新版 日本の島事典 》編集室



*『新版 日本の島事典』* 上下卷計1,600頁 ¥77,000(税込)
監修・編著:長嶋俊介・渡辺幸重 三交社刊
2022年12月6日刊行予定

27年ぶりの改訂新版で国土地理院地図情報をベースに日本の島嶼(島・岩礁)を精査し、新定義「周囲0.1㎞以上及び0.1㎞未満の名称付き自然島」による我が国の島嶼数を初めて1万5,712とした。本書は、これを基に有人島など歴史的に重要な約2,000の島の「沿革」を著し、都道府県別に無人島・人工島などを含む島嶼の
「現在」を示した歴史的大著である。
上製本、ケース入り、分売不可。
◎内容
・はじめに 基礎データ(島数概要)
・第1部 日本の島々(解説編)
・第2部 島々の歴史(年表編)
・第3部 島嶼県別集計(データ編)

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片山通夫写真集 ”ONCE UPON a TIME”は
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片山通夫写真集 ”ONCE UPON a TIME”
60年代から撮り続けたドキュメンタリー220点あまりを収録した写真集。1960年代のキューバ、「北送」と呼ばれた在日朝鮮人の祖国帰還の新潟港。ベイルートの重信房子、ブルガリア、チェコ、ルーマニアなど東欧諸国の民主化や廃墟となったチョルノブイリ、作者のライフワークとなったサハリンの戦後問題。
そして時代を映す日本の折々の風景を
モノクロームで描いた作品集。オンデマンド印刷。
全286頁。モノクローム写真239点を収録。
発行 publishing house Lapiz
本体価格 3600円(税込)+送料(370円)
お問合せ・ご注文はメールで。
お名前、電話番号、郵送先など連絡先をお忘なく。
info*609studio.com *→@に変えてください。

現代時評《満州国建国と重なるウクライナ4州併合》井上脩身

 ロシアのプーチン大統領は9月30日、ウクライナの東部・南部の4州をロシア領に編入すると宣言した。強奪というほかないロシアによるウクライナ領土の併合に対し、ウクライナは反転攻勢を展開しロシア軍を猛攻、ウクライナ戦争は新た局面に入った。岸田首相は10月3日の所信表明演説で「力による一方的な現状変更は許されない」と非難したが、90年前の1932年、軍事占領した中国東北部の満州に傀儡国家である満州国を成立させたのはわが国である。ウクライナ4州併合を満州国建国と重ね合わせると、ウクライナ戦争の今後をうらなう、あるキーワードがうかびあがる。「Iの国」である。 続きを読む 現代時評《満州国建国と重なるウクライナ4州併合》井上脩身

近刊情報《片山通夫写真集ONCE UPON A TIME 002》井上脩身

片山作品に見る冷戦下のフォトジャーナリズム 002

陽気さの奥の翳を捉えるカメラアイ

キューバの近現代の歴史を概観しておこう。
スペインの支配下にあったキューバが1902年に独立した後、製糖産業などにアメリカ資本が多数進出。1952年、バティスタがクーデターで政権を奪取すると、アメリカのキューバ支配がいっそう進んだ。バティスタ独裁政治に反旗を掲げたカストロは、メキシコに亡命中にゲバラに出会って後の1956年にキューバに上陸、2年余りのゲリラ闘争のすえ、1959年1月、バティスタを国外に追放、革命政権を樹立した。 続きを読む 近刊情報《片山通夫写真集ONCE UPON A TIME 002》井上脩身

近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME 》井上脩身

「片山作品に見る冷戦下のフォトジャーナリズム」001

片山通夫さんは私と同い年の1944年生まれである。高校に入学したのが1960年、いわゆる安保の年だ。安保条約はつまるところ東西冷戦のなか、わが国がアメリカの核の傘に入ることであったといえるだろう。核戦争の恐れは1962年のキューバ危機により具体的恐怖となり、人類は核の均衡という緊張状態のなかで息をつめて生きていくことになる。こうした時代背景をうけて、若き日の片山さんはカメラを手にキューバにとび、米ソ対立の最前線にあるカリブの国の人たちの実相に迫った。そこで磨いたカメラアイはやがて日本の敗戦でサハリンに取り残された朝鮮人に向ける。深いしわの奥ににじむ誇りと尊厳。片山さんはレンズを通して物言わぬ辺境の地の人たちに寄り添う。そこに私はフォトジャーナリストとしての鋭い時代感覚と温もりある人間性をみる。 続きを読む 近刊解説《片山通夫写真集 ONCE UPON A TIME 》井上脩身

現代時評《国の品格落とす安倍氏の国葬》井上脩身

~チャーチル元英国首相との違いを考察~

9月8日に亡くなったエリザベス女王(写真)の国葬が19日、執り行われた。わが国の天皇をはじめ世界各国の国家元首や首脳約500人が参列して営まれた葬儀は、国葬の名にふさわしい荘厳な趣を醸し出していた。イギリスでは女王以外の国葬は、第2次大戦後では1965年に亡くなったチャーチル元首相だけである。イギリスでは王以外の人物を国葬とする場合、王室と議会の同意が必要だが、わが国では国会の承認を得ないまま、27日に安倍元首相の国葬が行われる。イギリスの例をみるならば、議会に諮ることなく国葬を行い得るのは、安倍氏がチャーチル以上に高く評価される歴史的政治家であると、国民のだれしもが認める場合に限られるであろう。しかし岸田首相がチャーチルの業績を分析し、安倍氏と比較検討した気配は全くない。 続きを読む 現代時評《国の品格落とす安倍氏の国葬》井上脩身

現代時評《時代錯誤の元首相国葬》井上脩身

安倍国葬反対集会 ・インターネットより

8月20、21日に毎日新聞が行った世論調査によると、岸田内閣の支持率が36%と7月の調査より16ポイントも急落した。回答者の87%が自民党と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係に問題があるとし、安倍晋三元首相の国葬に53%が反対している。旧統一教会と深いつながりがある安倍氏の国葬に半数以上の国民が嫌悪感をいだいているのである。安倍氏が銃弾によって非業な死を遂げたことはまぎれもない。だがそれが「政治家安倍」の知られざる精神世界を浮き上がらせたことも事実である。国葬が妥当であるのか。私なりにかんがえてみた。 続きを読む 現代時評《時代錯誤の元首相国葬》井上脩身

◇現代時評《安倍元首相襲撃容疑者の心を読む》井上脩身

街頭演説中の安倍晋三元首相が手製銃で暗殺された事件で、容疑者が宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の最高幹部に強い恨みを持っていたことがこれまでの捜査で判明。さらに安倍氏を狙った理由について、容疑者は安倍氏が同教団に近い関係にあると思ったから、と供述しているという。だが、これだけの動機で銃の引き金を引いたとは思えない。容疑者はなぜ同教団の教祖的存在である最高幹部に代えて安倍氏殺害に至ったのか。容疑者には、安倍氏がカリス性をおびた政治的教祖に見えたからではないのだろうか。この事件の解明のカギは「教祖」だと私は考える。 続きを読む ◇現代時評《安倍元首相襲撃容疑者の心を読む》井上脩身

現代時評《勝敗分けるドンバス攻防戦》井上脩身

ロシアがウクライナに侵略戦争を始めて4カ月がたった。ロシアは現在東部ドンバス地方に戦力を集中させている。ドンバスを完全制圧して属国にするのがプーチン大統領の狙いであることは、「ネオナチストから守る」とのプーチン氏の発言から見て明らかである。この目的達成ために周到に用意されたプロパガンダの結果であることが、最近上映された映画『ドンバス』を見てわかった。ドンバス地方には「ウクライナ兵はファシスト」と信じて疑わない人が少なくないのである。ウクライナ軍が、NATO諸国からの兵器の支援を得て東部戦線のロシア軍を押し返すことができても、住民たちに植え込まれた反ネオナチス感情を払拭するのは難しい。ウクライナ側にとって、この戦争はいま極めて厳しい局面にさしかかっている。 続きを読む 現代時評《勝敗分けるドンバス攻防戦》井上脩身

現代時評《ロシア軍のウクライナ国民排撃レイプ》井上脩身

ロシアがウクライナに侵攻を開始して3カ月余りがすぎたが、戦争が長引くにつれ、民間人に対する殺害などのロシア軍兵士の犯罪行為が次々に明るみに出ている。こうしたなか、信じがたい報道に接した。ウクライナの女性に性交渉を嫌悪させ、結果とし子供を産まなくなることを目的に、ロシア兵がレイプを行っているというのだ。レイプは女性の尊厳に対する卑劣な行為であるが、加えてウクライナ国民としての尊厳そのものを切り裂き、さらには将来生まれるであろう子供をも抹殺する″ウクライナ人全否定レイプ″である。プーチン大統領がいかにウクライナ戦争を正当化しようと、「悪魔の集団犯罪」というほかない。

この報道は5月10日付毎日新聞のコラム「火論」の中で取り上げられた。執筆者は2年連続新聞協会賞の受賞歴がある大治朋子記者。概要は以下の通りである。
ウクライナのメディアによると、兵士によるレイプは4月の前半に市民団体に情報が寄せられた被害だけでも約400件。首都キーウ(キエフ)近郊のブチャでは14~24歳の女性約25人が民家の地下で繰り返しレイプされてうち9人が妊娠した。ロシア兵は女性たちに、このレイプで今後、彼女らが性交渉を嫌悪するようになり、子供を持てなくするのが狙いだと語った。
大治記者はロシア兵のレイプ目的について、「『敵』の子孫の繁栄を阻むため」と表現。ウクライナ人の子供をつくらせないためにレイプしたというのである。
大治記者は「犠牲者の一部は殺されていない」としたうえで「レイプの傷が刻まれた女性をあえて生かすことで、人々に癒えることのない傷と恐怖を刻み込む。それこそがウクライナ社会そのものへの凌辱」と書く。
子供を産めないようにするためのレイプ例はあるのだろうか。調べてみると「アカイエス事件」に行き当たった。1944年、東アフリカのルワンダで50~100万人の市民が虐殺されたジェノサイドについて、国連安保理事会によってルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)が設立され、アカイエスという元タバ市長が裁かれた。アカイエスは影響力があり、住民は彼を尊敬、命令に従ったという。
裁判で被害者が「見つけ次第強姦する」と言われたと証言。多くの女性が繰り返し強姦されており、組織的なレイプであることが判明。アカイエスが「唯一の敵を除去するために協力するように」と住民に呼びかけており、実際、レイプの多くはタバ市庁舎の中や近くで行われた。
強姦された女性が、その結果子供を産むことを拒否するようになること、恐怖やトラウマから子供を産めなくなることから、強姦も虐殺などと同様、ジェノサイドの要素とされている。ルワンダのフツ族とツチ族との戦いのなか、フツ族がツチ族を抹殺の手段として公然レイプを犯したとして、アカイエスはジェノサイドの罪で終身刑が言い渡された。
ウクライナ人女性に子供を産ませないために行ったロシア兵の犯罪は、ルワンダでのおぞましい事件と基本的に何ら変わらない。大治記者は「ウクライナ社会への凌辱」と書いたが、「全女性への凌辱」でもある。愛の喜びである性を汚らわしいものにするという点で「人間への凌辱」であり、子供が生まれてこれないようにするという点では「未来への凌辱」でもある。
ルワンダ大虐殺ではアカイエスが裁かれた。ロシア兵のレイプについて本当に裁かれるべきは誰であろうか。
ロシアのプーチン大統領は4月18日、ブチャを攻略したロシア軍兵士の「英雄行為」をたたえ、名誉称号を与えた。英雄行為のなかに、レイプも入っているのであろうか。
プーチン大統領は5月9日の戦勝記念日の演説で「我々の責務はナチズムを倒すこと」と述べた。ナチズムがユダヤ人排撃思想であったことはまぎれもない。「ナチズム打倒」を名目にウクライナ国民排撃戦争に打って出たプーチン大統領。裁かれるべき者はだれの目にも歴然としている。