現代時評《煽る日米、怒る北朝鮮》山梨良平

金日成広場にて

北朝鮮の朝鮮中央通信は2月20日、西部に展開する朝鮮人民軍部隊が軍事デモンストレーションとして、口径600ミリの超大型放射砲(多連装ロケット砲)2発を発射したと報じた。我が国は当然のことながら北朝鮮に対して「北京の大使館を通じて厳重に抗議した。」 と発表した。
時事通信は、《北朝鮮が短距離弾道ミサイル2発 与正氏「太平洋」への発射警告―国連安保理、21日緊急会合》と続いて報じた。

つまり2日続けて大陸弾道弾と多連装ロケット砲を発射したというわけである。北朝鮮の真意はわからないが《「前例のない 強力な対応に直面する」北朝鮮が警告 来月予定の米韓合同軍事演習 」》と反発していた。一方の韓米両軍は、来月中旬に合同軍事演習「フリーダムシールド」を11日間にわたり行う予定で、今回は5年ぶりに大規模な野外機動訓練を再開する予定だという。この演習は北朝鮮の目と鼻の先で行われるらしい。

話は変わるが、「敵性国を封じ込める」為には何が必要か?古来、先方としては兵糧攻めが有効だった時代もあった。また容赦しない力(軍事力)を敵に見せつける場合もあった。もちろん交渉力(日頃の外交力ともいう)も有効だ。ここで考えるべきことは、韓国と北朝鮮の2国間の交渉は保守系の大統領の登場でとん挫したように見えること。それでは前政権は如何だったかの言うと、残念ながら北朝鮮に足元を見られているうちに5年という任期が切れてしまった。そして長年の対立はそう簡単には解決することはない。

一連の北朝鮮のミサイル発射などは韓国や日本を相手に発射してるわけではないことは自明の理だ。北朝鮮の相手は米国なのだ。それも決して戦争をしようとは考えてはいまい。もちろん想像に過ぎないが、彼らは米国と国交を回復するつもりでいるのではないか。しかし米国や韓国、日本などはそれを一笑に付している。韓国の前政権はそれでも米国と北朝鮮の仲を取り持とうとしたが、残念な結果に終わている。おそらくトランプ政権の内部事情も大きく作用したのではないかと思う。日本は米国追随しか出来ないのでそれまでだ。

こうして一連の動きを想像を交えて見てみると、米国が真摯に北朝鮮と交渉すれば東アジアの安定はすぐさま訪れる可能性がある。1971年のキッシンジャーの中国訪問から始まった米中国交回復の動きは、72年のニクソン大統領の訪中を経て、79年のカーター大統領の時に実現した。おそらくソ連、中国を始め韓国も日本も寝耳に水の出来事だったと思う。対キューバでも、当時のワシントンの主・オバマ大統領はキューバ政策を一変させた。
2014年12月17日にオバマとキューバ国家評議会議長ラウル・カストロは国交正常化交渉の開始を電撃発表した。数か月以内に大使館を開設し、銀行や通商関係の正常化を話し合うことでも合意した。両国政府は2013年からカナダ政府とローマ教皇フランシスコの仲介で、秘密裏に交渉を続けてきた。中国との交渉もキューバとの国交正常化も常に「秘密裡の交渉かつ電撃的発表」だった。今後北朝鮮の対米国非難が電撃的な展開を見せるかもしれない。

伝えられる所によると、ミサイルなどに巨額の予算をつぎ込み、国民を飢えに陥れる北朝鮮の状況は、直近の30年間を「失われた30年間」と言われる我が国と程度の差こそあれ似たような気がする。国民の犠牲の上に政治が行われている状態だ。早くそのことに気づくべきだと思う。