現代時評《節くれだった手》貝塚次郎

ベルリンの壁:撮影1990 片山通夫

 私が今思っていることはロシアとウクライナの戦争です。何の力もない私が何も言いてもどうにもならない事は十分に承知していますが、お付き合い下さい。

過去30年以前の旧ソ連や東欧諸国の歴史を箇条書きにしてみました。

1985年  ゴルバチョフ ソ連共産党書記長に就任 (ペレ    ストロイカ)
1989年  ポーランド選挙で 連帯 圧勝     (ワレサ地藤亮就任)
同    ルーマニアでチャウチェスク政権崩壊
同    ベルリンの壁 崩壊
同    マルタ会談  冷戦終結
1990年  東西ドイツが統一
1991年  ソ連邦崩壊体 ロシア連邦誕生 初代大統領にエリツイン就任

プーチン大統領の年譜

1999年 首相に就任
2000年 エリツインの後の大統領に就任
2005年 下院議員選挙法の改悪 小選挙区営の廃止 全議員比例区から
2008年 傀儡メドベージェフ大統領政権の首相に就任
(以降選挙制度を何度も変更 中央集権を進める)
2012年 以降  大統領に就任 永世大統領の地位を得る

私は、プーチン氏のこの進め方が独裁を許した原点になったと考えています。
大統領2期目に入り、自身の政権をより強固にする為に,下院議員をプーチ一派に協力する人達が選ばれる様に制度に変更していく最初の行動だと思います。プーチンに任せたら国家がよくなると思わせて、自身の権力の増強を考えて、慎重に進めていったと考えられます。
また、ゴルバチヨフの時代に、ペレストロイカを経験し,せっかく手に入れ掛けた民主国家に進む歩みを、ロシアの人々が放棄した(騙された)大事な節目になった出来事だと思います。独裁政治の始まりは、一般の民衆の支持が相当高くなくては成り立たないからです。

話は変わりますが、この間、《イワンのばか》の翻訳物をユーチューブで聞きました。
帝政ロシア時代の1886年頃、文豪レフ・トルストイが、ロシア民話を題材に小説化したお話です。

長兄のセミョーンや次兄タラースが、小悪魔の力を借りてそれぞれ軍事国家や商業国家を作りながら、やがて失敗して国を亡ぼす中で、バカのイワンは小悪魔の甘言を聞かず、節くれだった手を持つ人々が優遇さえる王国を作り上げてゆく物語です。

現在のロシアで、物語の長兄や次兄の国の指導者たちは誰々なのかと考えた時、軍事面ではシロヴィキを中心にした連邦軍の高官(ショイグ大臣やゲラシモフ参謀総長)や民間軍事会社ワグネルのプリゴジン氏らの一団、経済面ではオルガルヒと言われる大富豪たちが、節くれだった手を持たない人々だと考えられます。

物語と違って、老悪魔や3匹の小悪魔をやっつけるはずのロシア正教会もイワンの味方とはなってくれません。

現在のロシアの政治は、プーチン大統領を頂点にして、長兄セミョーンの軍国のメンバー(シロヴィキやワグネル)、次兄セルグの経済国家のメンバー(オルガルヒ)の人達、またロシアの諜報機関の元KGBの出身者、ボルトニコフやナルイキン等が、自身の出世栄達・利益確保の為に政策を作成執行し、バカのイワンの国の住民、節くれだった手を持った人々の事は,所謂「生かさず殺さず」の考えに基づいた政権運営をしてきた様に思います。
このような国家運営は、ロシアだけに限られ者ではなく、自身の栄誉と栄達を目指す、世界中の多くの国々の指導者たちが陥りやすい何かが有るのでしょう。

今すぐではないとしても、いつかこの紛争も終わりを迎えるはずです。ただ、ますます複雑になって行く地球上の国々がどのように運営されていけば良いのかは、百数十年も前に書かれたこの小説の様な解決方法が、現在では通用するはずも有りません。

現在の節くれだった手を持つ人々と現在の為政者の関係を考えて、今後の人類がどうあるべきかを考えて、私た教えてくれるちに作家の出現を待ち望んでいます。

有難う御座いました。