現代時評《NHK考》山梨良平

この夏、電力不足が叫ばれた。笑っちゃいけないのだろうが、「皆様のNHK」は「スタジオの照明を落として(暗くして)」放送していると再三断っていた。黙っていたらわからないのだろうけど、いかにも「深刻な電力不足」を演出しているように思えた。ところでNHKはいったいいくつの電波で放送しているのだろうか?筆者はめったにテレビを見ないのだけど、安部政権時代からの「政権べったり」の姿勢が気になってニュースなどは見るようにしている。

2021年度のNHK単体の事業支出は6609億円(小会社を含む連結では7057億円)で、そのうち約2900億円が「国内放送費」として番組の制作費などに充てられているそうだ。
潤沢な予算だと驚く。また放送内容もタレントを使った民放と似たようなバラエティ番組が増えてきて民放局の内容にどんどん近くなり、筆者などは画面の色使いやタレントたちの「嬌声」に、チャンネルを間違ったと勘違いするほどである。

一方で報道番組では良質な番組が安部政権時代からどんどん消えている。上智大学文学部新聞学科教授でジャーナリストの水島宏明氏は「特に2012年以降の安倍・菅政権下で改憲に疑問を呈す憲法学者を出さなくなり、全くといっていいほど政権批判を見なくなりました。NHKの予算審議の兼ね合いがあるのでしょうが、同じく公共放送のイギリスBBCと比べると、政権への忖度が目に付きます」と危惧する。「予算審議の兼ね合い」は以前から国会で審議されていて今に始まったことではないだろうに。
それと気になるのが、最近の番組。コロナで取材も番組制作も思うように行かないのか、昔の番組を延々と流している。節電も必要なら2波位停波してもよさそうなものだ。スタジオ暗くして節電してますなんて笑止千万。
しわ寄せは外部の下請けに。

政権は面と向かっては言わないが「圧力をかけた」ことは明白だ感じる。公共放送であるはずのNHKが民放では作れない質の高いドキュメンタリー番組や教育番組、正確で公正なニュース番組を作らなくなったのも政権の圧力と、前田晃伸会長の方針で「民間の発想でもっと見られる放送局への脱皮」を目標に掲げているらしいことに違和感がある。この「民間の発想」は受信料を徴収して運営することと相容れないのではないか。

ところで正確なデータを持ち合わせてはいないので、あまり大きな声では言えないが、昨今の若者は、車離れ、新聞離れ、最近ではテレビも見ないと言われてる。スマートフォンですべてをまかなうことができるそうである。ただ電波を垂れ流しているテレビは消えてゆく運命なのかもしれない。