【609 Studio】email newsletter> 2020年8月25日 No.964

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【609 Studio】email newsletter> 2020年8月25日 No.964
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8/20 カヴァーストーリー  中川眞須良
8/21 Lapizの思い      編集長 井上脩身
8/22 巻頭言        編集長 井上脩身
8/23 徒然の章       中務淳行
8/24 コラムびえんと    編集長 井上脩身
8/25 シリーズ原発を考える 編集長 井上脩身
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◇◇現代時評《ハリス副大統領候補指名の意義》井上脩身
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私はバラク・オバマ氏が大統領選挙で当選した2008年11月4日から21世紀が始まったと考えている。20世紀末まで黒人がアメリカの大統領になるとは考えられなかったからだ。しかし、2016年の大統領選では、白人優位主義傾向が強い共和党のトランプ氏が当選し、20世紀に後戻りすることになった。そのトランプ氏が再選を目指す中、民主党は全国大会で19日、副大統領候補にカラマ・ハリス氏を指名した。ハリス氏は上院唯一の女性議員で現在55歳。大統領候補である77歳のジョー・バイデン氏が当選しても1期しか大統領の座につかないとみられことから、ハリス氏が2024年の大統領選の候補者として名乗りを上げた形だ。前回大統領選では、女性初の大統領の期待がかかったクリントン氏でなく、トランプ氏を選んだアメリカである。黒人でかつ女性であるハリ
ス氏が大統領になれば、その歴史的意義は計り知れない。今度の選挙はアメリカの、ひいては世界の21世紀の行方にかかわる極めて重大な選挙である。

新聞報道によると、ハリス氏はカリフォルニア生まれ、父はジャマイカ系黒人の経済学者、母はインド系のがん研究者。カリフォルニア州の地方検事として麻薬問題やギャング撲滅などに取り組み、2010年、公選制のカリフォルニア州司法長官に就任、16年、上院選で初当選した。民主党の候補者争いでハリス氏はバイデン氏を舌鋒鋭く批判、バイデン氏が「恐れ知らずの闘士」と舌を巻いたといわれる(8月13日付毎日新聞)。そのバイデン氏が副大統領候補者としてハリス氏を挙げたのは、彼女を指名することで得票の上乗せになるともくろんだことはまぎれもない。
直近の世論調査(8月1日)では、バイデン氏49・4%、トランプ氏42%と、バイデン氏が7ポイントリードしている。トランプ氏の支持率低下の最大の要因は新型コロナウイルス感染防止に消極的であったことだ。「ウイルスの99%は無害」などと科学的根拠のない発言をつづけ、マスク着用についても、「個人の自由に対する政府介入の象徴」と反対する支持層に配慮し、着用の義務化を拒んできた。その一方で積極的に経済再開を進めてきた結果、感染を拡大させることになった。8月18日現在のアメリカの感染者は544万3162人、死者は17万548人。死者は1日に500~1000人にのぼり、このペースが続けば、大統領選までに22万人以上にのぼる見込み。感染元の中国を声高に非難するだけで、適切な防止策をとらなかったトランプ氏の政治責任は免れない。

バイデン氏は、こうしたトランプ氏のオウンゴールによってポイントを挙げてきたに過ぎない。74歳のトランプ氏より4歳も高齢であることなど、積極的な集票力に乏しいバイデン氏としては、ハリス氏の闘争力で自らの魅力のなさを補おうという魂胆であろう。
問題は、ハリス氏との二人三脚によって集票力がアップするか、である。黒人であること、女性であること、この二つの要素を分析しなければならない。
黒人に参政権が与えられたのは南北戦争が終結した1865年。合衆国憲法修正13~15条によってである。人種差別を禁じる公民権法が成立したのはそのほぼ100年後の1964年。オバマ氏が大統領選で当選したのはその44年後。オバマ氏の政治力もさることながら、「ブラックケネディ」というキャッチフレーズが効いたことは否めない。

女性の参政権が認められたのは黒人参政権より55年も後の1920年。ニュージーランドの1893年、オーストラリアの1902年に比べると随分遅い。それにも増して驚くべきなのは、合衆国憲法に男女平等が規定されてないことだ。1972年、男女平等修正案が連邦議会で採択されたが、「家庭の崩壊を招く」と保守派が根強く抵抗。憲法改正には4分の3の州の批准が必要だが、男女平等修正案については、10年間の期限内に4分の3を超えず、期限を延長しても3州の批准が足らなかった。(辻村みよ子『比較のなかの改憲論』岩波新書)

先進国では当然の規範である「男女平等」がアメリカでは憲法上保障されていないと事実は、「自由の国」のイメージからみれば意外である。だが、銃の規制見られるように、極めて保守的な一面を合わせもつ国である。前回大統領選で多くの人が「クリントン氏が勝つ」とみたが、女性蔑視が白人層の一部に根強く、結果としてクリントン氏が涙をのんだ。
今度の選挙でも、ハリス氏が4年後に女性初の大統領になり得ることに拒否反応を示す保守層は少なからずいると思われ、バイデン氏にとって集票上必ずしもプラスになるとは言い切れない。あるいはトランプ氏はにんまりしているかもしれない。
それだけに、バイデン氏が勝った場合の歴史的意味は大きい。すでに述べたように2024年選挙で黒人でかつ初の女性大統領が誕生する公算が大きくなるからである。もしそうなれば、21世紀は非白人女性が大いに社会進出する世紀になる可能性が高い。それは、古代ローマ帝国時代から現代まで揺るぐことなく続いてきた欧米白人中心世界との決別を意味する。今度のアメリカ大統領選は、世界史的変革の端緒となるかどうかの重大な選挙なのである。
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コロナ騒ぎの陰で不穏な出来事が世界中で起こっています。
ロシアでは野党指導者が毒を飲まされたようです。
モーリシャスでは日本の船が座礁してオイルで汚染。
ベラルーシでは反体制デモ  などなど。

そういえば安倍さんの引退?が取りざたされているような印象。
簡単には後継者を指名できないかもしれません。何しろ数々の問題が・・。
その問題を不問にしてくれる後継者となると・・・・。

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発行  2020年8月25日 No.964

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