現代時評《嘘で固めたコロナ戦線》片山通夫

昔、そう、日本が無謀な戦争をやっていた頃、敵から攻撃を受けて逃げるさまを転進と称していた。
例えば「(前略)昨年八月以降引続き、上陸せる優勢なる敵軍を同島の一角に圧迫し激戦敢闘、克く敵戦力を撃砕しつつありしが、其の目的を達成せるに依り、二月上旬同島を撤し、他に転進せしめられたり。(後略) 」と1943年2月、ガダルカナル島の戦い(ケ号作戦)における「敗退」を大本営発表で「転進」と表現した。大本営発表(2月9日19時)である。

そして今世界をおびやかしている新型コロナウイルスとの戦いでも、安倍政権は同じような愚を犯している。少し海外の状況に目を向けている市民なら唖然としたことがあった。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、休業を余儀なくされている事業者や雇用者に対する経済的な支援策を巡り、安倍晋三首相は臆面もなく「国際的に全く遜色ない」と胸を張り、「我が国の支援は世界で最も手厚い」とも言い切った。今月初めのことである。元検事で弁護士の郷原信郎氏は「安倍首相のウソ、今に始まったことではないが、この状況でこれだけ露骨なウソはやめてほしい」とツイートした。(この項毎日新聞から

もちろんネット上では非難ごうごうである。「我が国の支援は世界で最も手厚い」という首相の言葉を取り上げて他国と比べる記事も散見できる。無論郷原氏のコメントが正しい。しかし筆者の知る限り、安倍首相は訂正も撤回も今のところしていない。そしてマスコミを抱き込んだのか、国民一人当たり10万円支給するという話も、ずっと以前からあたかも自民党と公明党、そして自民党議員たちの要望だったかのような言動がこの何日か賑わせている。
しかしこれも真っ赤な嘘だ。30万円を条件付きで支給するという案を持ち出したのは政府と自民党。野党はすでに国民すべてに支給すべしといっていた。
のど元過ぎればなんとやらで、忘れやすい国民だと安倍政権とそれを取り巻く連中に舐めて見られているようだ。
次に挙げる麻生財務大臣のセリフとともに決して忘れないでおきたい。

麻生太郎財務相は4月17日の記者会見で「手を上げた方に1人10万円ということになる」
まさに老害以外の何物でもない。