現代時評《コロナウイルス狂騒曲》山梨良平

 

 

~終わりの始まりか~

それはチェルノブイリ原発事故から始まった1986年4月26日1時23分(モスクワ時間)に、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国のチェルノブイリ原子力発電所4号炉で起きた。大事故だった。ソ連当局は当初この事故をひた隠しにしていた。抑え込もうとしていたのだ。

ことの発覚は意外なところからだった。 事故の2日後の28日、スウェーデンのフォルスマルク原子力発電所で、職員の靴から高線量の放射性物質が検出されたことが発覚のきっかけとなったのだ同日中にスウェーデンは外務省を通してソ連に原発事故の有無を問い合わせたが、当初は否定していた。しかし国際原子力機関(IAEA)に事態を報告する意向を伝えられると、一転してチェルノブイリ原発で事故が発生した事実を認めた。

隠しおおせると思っていたことに驚きだ。ソ連はそれでも国内では隠し通そうとした。時のソ連共産党書記長はゴルバチョフ。彼は前任者のチェルネンコがその死によってわずか1年余りで幕を閉じたあと、1985年3月11日に就任している。その1年後にあの惨事が起こったわけである。先に書いたように、ソ連政府はこの事故の情報を抑え込もうとした。つまりスウェーデン外務省の指摘を受けるまでの2日間抑え込んでいた。それでも隠ぺいすることが無理だということに気が付いてながらゴルバチョフは積極的に公開することに躊躇した形跡がある。しかし最終的にはグラスノスチ(情報公開)の重要性に気が付いたのかペレストロイカ(改革)の一環でグラスノスチに踏み切った。

結局ゴルバチョフの唱えるペレストロイカはとん挫したのだが、人々は混乱の中ででも自由や団結を手に入れた。

こうした中でソ連邦の崩壊が起こった。

コロナウイルスに翻弄される中国

さて眼を今の中国の状況に向けたい。ちょうどこの稿を書いているときに、コロナウイルスに侵された一人の医師がなくなったという報道があった。彼は当局が公表する前の「原因不明」の段階で感染への注意喚起をした眼科医、李文亮さん(33)(写真)で7日、自らも感染した末に亡くなった。(この項朝日新聞)

彼の死を中国国民はどのようにとらえたか?

2020年2月8日付のAFP通信は「中国、ウイルス警告医師の死で情報統制か 報道錯綜に批判」と題して次のように報道した。

中国で、新型コロナウイルスの流行について警鐘を鳴らした李文亮(Li Wenliang)医師(34)の死をめぐる報道に対し、怒りの声が上がっている。中国メディアは医師の死を一度報じた後、一転して存命を伝え、その後再び死亡を報じていた。  

詳しくは上記の記事を読んでいただければわかるが、同記事はウェイボーではハッシュタグ「李文亮医生去世」(李文亮医師が死去)が検索ランキングで首位となり、閲覧回数は10億回、コメント数は110万件を超えた。と伝えているがハッシュタグは消された。つまりおそらく政府関係機関が操作したと思われる。事態がここに至ってもその隠蔽体質は変わっていないのだ。

21世紀も20年たつというのに、過去の体質を引きずって14億だかの国民を統率してゆこうと考える構図は、国民数こそおおきく違うが旧ソ連のそれと全く同様の状況だ。

筆者は習近平体制はあまり長くないと思うのだが。もしこの体制が続くようなら重大な結果が中国は無論世界の政治体制によくない危険をおよぼす。しかし筆者はゆっくりとだが習近平体制は終わってゆくと思う。ソ連の崩壊のように。 世界は中国の経済面だけに注意を払うのはやめるべきだ。