映画・南極物語秘話
南極物語と言う映画があった。第一次南極観測隊が連れて行った犬橇隊の樺太犬15頭を第二次越冬隊が、長期にわたる悪天候の為に南極への上陸・越冬を断念、その撤退の過程で昭和基地におきざりにした。極寒の南極で餌もなく残された犬たちの運命を実話に基づいて描かれた映画である。(1983年公開)この15頭の樺太犬は稚内で訓練された。
筆者はかねてからの知り合いであるサハリン少数民族に関して数々の論文を発表されている札幌在住の研究者と過日札幌でお会いした。そのとき筆者との間で次のような会話があった。
この研究者は北海道教育庁に勤務されてる。
彼は筆者に聞いた。
「南極物語って映画知ってますか」
「ええ、あのタロとジロの物語でしょう」
「そうそう、あの犬は樺太犬だったのですよ。あの犬たちを犬橇隊として訓練したのが誰だか知っていますか」
「・・・」
「ニブフの後藤直太郎と言う人です」
「・・・」
「日本が国連の地球観測に参加して南極に観測隊を送ることになったのはもう50年も前のことですよね。そのとき物資の輸送に犬橇を使うことにしたのです」
「しかしその犬を訓練できる人がいなかった。北海道大学理学部動物学教室の犬飼教授のもとに第一次観測隊から依頼があったのですね。犬飼教授は戦前樺太の敷香(しすか・現ポロナイスク)で樺太犬を調査した経験があったのです。そこで犬飼教授は稚内に訓練所を設けて短期間の訓練を目指したのです」
樺太犬は戦前樺太で少数民族と共にあったが、かなり北海道に持ち込まれていたと言う。北海道の樺太犬が集められた。しかし実際に訓練する人がいない。
「犬飼教授は戦犯としてシベリアに抑留されていたニブフの後藤直太郎が帰還して函館にいることを知り彼に協力を求めたのです」
「後藤さんは戦犯でシベリアに抑留されていたのですか」
「戦前、樺太で日本軍に協力したという理由で6年間シベリアで強制労働させられた人です。後藤と言いますが純粋のサハリン北方少数民族(ニブフ)です。犬の訓練はうまく行きました」
映画・南極物語では感動的な犬たち、そして生き残ったタロとジロに世間の関心は集まり、人々に感動をもたらした。
しかしその陰でひとりの北方少数民族の男・後藤直太郎の協力があったことは知られていない。そして彼の晩年は定かではない。釧路で寂しく亡くなったとも聞いた。
「ねえ、片山さん。祖国って彼にとってはなんだったんでしょうね。日本って彼にとって本当に祖国だったのでしょうか」
研究者の言葉が重くのしかかる。
コメント
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投稿者: rion xukroib | 2007年07月23日 00:52