《晋三氏の憂鬱》片山通夫

「新年早々」という言葉が思い浮かんだ。北朝鮮の金委員長に対抗して《トランプ米大統領「私の核ボタンの方が強力」》とツイートしたニュースではない。天皇退位に「新元号、少ない画数に…1文字15画上限の方針」と、漢字の読めない首相や財務相に「忖度」した話でもない。

南北朝鮮の平昌冬季オリンピックをめぐる動きだ。韓国は以前から北朝鮮がオリンピックに参加するよう働きかけていたことは周知の事実だ。北朝鮮の金委員長はこれに呼応するかのように「韓国とのホットラインの再開を決定」した。そしてオリンピック参加への意思表示ともとれる構えを見せた。一方、アメリカのトランプ大統領は文在寅韓国大統領との電話会談で「2月の平昌五輪期間中の演習延期に合意」し、4日朝、ツイッターで北朝鮮と韓国の間で対話の機運が高まりつつあることに触れ、「対話は良いことだ」と歓迎し、事態の行方を見守っていく姿勢を示した。

2月に向けて、南北朝鮮の緊張が一気に解ける機運が出てきた。もちろん決して安心できる状態ではないことも事実だが。

さてそこでだが、我が国の河野外相は「平昌五輪への安倍首相の出席は難しい」と再三にわたって述べてきた。一方韓国の聯合ニュースは昨年12月20日付のニュースで「平昌五輪出席予定の首脳・政府代表43人に リオ大会上回るか」として「五輪に出席予定の各国の首脳や政府代表が現時点で43人に達したと明らかにした。開幕が近づくにつれて増えており、16年のリオ五輪の45人を上回ることが予想される」と報じた。

当然、この45人の首脳の中には安倍首相は含まれていないようだ。

安倍晋三氏は昨年の突然の衆議院解散に打って出て、北朝鮮の脅威をあおって「国難」を連発して勝利を収めた。安倍晋三氏はアメリカから莫大な兵器を買う約束をトランプ大統領と交わした。安倍晋三氏はモリカケ問題から逃げまくっていたが、ミサイル危機を煽って国民の目から隠れた。

そんな安倍晋三氏はこの数日憂鬱の極みだ。何しろ「師と仰ぐトランプ大統領に韓国大統領が電話会談して、五輪期間中の韓米軍事演習を中止させた」のだから。安倍晋三氏はトランプ大統領から大量の武器を買う約束をさせられただけなのだから。それも自らのモリカケ問題から逃げるため、北朝鮮のミサイル危機を煽ったのだから断り切れなかったのだから。

9日に南北朝鮮は板門店で高官協議を行うというニュースが、この稿を書いている5日に世界を駆け巡った。

安倍晋三氏は今や憂鬱の極みである。